2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11874111
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
青木 優和 筑波大学, 生物科学系, 講師 (70251014)
|
Keywords | 端脚類 / 社会性 / 子守行動 / 海藻穿孔性 / 繁殖行動 / 行動生態 / 親子関係 / 甲殻類 |
Research Abstract |
本研究では、海産ヨコエビ類の社会性発展の程度についての解明を進めている。昨年度までの調査から、ワカメに穿孔造巣するヨコエビ類で造巣生態が著しく異なる2種、コンブノネクイムシCeinina japonicaとガラモノネクイムシBiancolina sp.の造巣生態や一夫一妻制、子との同居生活等についての知見が得られてきた。本年度の調査から、生息基質であるワカメの消失する時期におけるこれらのヨコエビの生息場所が明らかになった。ワカメのない時期にはホンダワラ類の茎部に穿孔造巣するが、この時期に作られる巣はワカメに造られるものとは全く異なり、また雌の産仔数や共存する子の数も全く異なることが示唆された。ワカメ消失期に移動のあることが予測されたため、夜間に海水の汲み上げ採集を行ったところ、わずかではあるが、移動中の個体を捕捉でき、移動個体のサイズも明らかとなった。これらから、このヨコエビ類では、アブラムシ等の昆虫に見られるような、季節的な生息基質の転換や繁殖生態の転換のある可能性がでてきた。これについては次年度さらに詳細に追求する予定である。 一方、他のヨコエビ類における親子関係の発展についても調査中である。現在、海藻葉上性のものなど数種のヨコエビ類及びこれまで子守行動の知られていなかったワレカラ類において、発達した親子関係が見い出されてきている。さらに浮遊生活を送るウミタルマワシ類のヨコエビ類についても東京大学海洋研究所の調査船淡青丸に乗船しての採集を既に行い、また他所からのサンプル提供も得て、これまでに知られていない数種での親子関係の存在を確認している。次年度にはこれらのデータも併せて公表する予定である。 今年度得られた研究成果については、2000年7月に東京大学で開催された日本動物学会関東支部会講演会「海の動物学-進化・環境・適応を考える-」および2000年10月に東北大学で開催された日本ベントス学会第14回大会において発表した。また、印刷公表はまだ行っていないが、研究結果に関連した3編の論文については既に投稿準備中である。
|