Research Abstract |
本研究は,都市化に伴う外部性のうち,特に,外部不経済の計測方法を確立することにより,都市成長に対する長期的な戦略構築のための分析方法を構築することを目的としている.まず,マーシャルからはじまる外部性研究のレビューを行い,その中から,技術的外部性に着目した問題の体系化を行った.さらに,都市開発のなかでも,郊外への宅地開発を取り上げ,その開発行為から供用段階にわたる諸問題を取り上げ,それをふまえて,外部効果の発生の流れを,経済主体,経済行為,副産物,状態,外部効果の5つのステップに区分して構造化した.これは,郊外に居住する住民としての経済主体が,通勤・通学という経済行為を行うことで,都心自動車交通量の増加という副産物を発生させ,本来の場所とは異なる地区に自動車混雑や排気ガス問題を発生させる状態を説明している.これにより,外部効果を計算できる.具体的には,各ステップの入力,出力構造をマトリックスで表現し,全体の流れを簡単な行列計算の積で計算できるモデルを構築した.これを用いて,例えば,郊外と都心の同じだけの立地量があったとしても,郊外部に立地したケースの方が自動車交通量が増加し,大気汚染や混雑などの外部不経済が多くなることを計算できる.今後は,必要なデータの取得やマトリックスの完成によって,計算システムをより実用的なものにするとともに,より多くの外部不経済問題に適用できるような拡張を図っていくこととしたい.
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