1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11875214
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
田中 皓 滋賀県立大学, 工学部, 助教授 (50026225)
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Keywords | 超高分子量ポリエチレン / 動的粘弾性 / 超音波特性 / 分子凝集状態 / ベータ分散 |
Research Abstract |
本研究課題を遂行するにあたり、試料として、重量平均分子量が50万、200万、330万、400万である4種類の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を用いた。ホットプレスで溶融加圧(170℃・100kg/cm^2)した後、加圧下で放冷し、フィルム状のサンプルとした。これらのフィルムについて、定速伸長試験および密度・DSC・動的粘弾性・超音波特性の測定を行った。得られた主な結果は以下のとうりである。 1.分子量が200万以上になると、ヤング率・降伏応力が低下した。また、降伏現象も小さくなった。さらに、延伸(延伸比7.5)したのち、室温に放置しておくと60%以上のひずみの回復が観測された。ひずみの回復は、通常の(分子量数万の)線状ポリエチレンには見られないことである。 2.密度は、分子量が高くなるにつれて、単調に減少した。一方、DSCの融解ピークから得られる結晶度も減少の傾向を示したが、50万と200万の間で減少に段差が認められた。これは、非晶領域の分子凝集状態の差を暗示する。 3.動的粘弾性測定で得られたE''およびtanδの温度依存性曲線に、線状ポリエチレン(HDPE)には観測されないβ分散が観測された。低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)に現れるβ分散は、非晶鎖のセグメント運動と考えられている。したがって、得られた動的粘弾性の結果は、分子量数万のHDPEにおいては明確には形成されない非晶領域が、分子量が100万を越えるようになると、線状ポリエチレンであるにもかかわらず形成されていることを示唆する。 4.超音波特性の測定については、予備実験を完了したところである。 以上の結果を踏まえて平成12年度には、系統的な測定を推し進め、分子運動性の違い、ひいては、本研究課題であるUHMWPEの耐衝撃性と分子凝集状態との関連について明らかにする計画である。
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