1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11876003
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
村井 耕二 福井県立大学, 生物資源学部, 助教授 (70261097)
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Keywords | コムギ / イネ / 湛水 / 通気組織 |
Research Abstract |
畑作物であるムギ類の堪水栽培を可能にするためには、根を無酸素状態に耐えられるように改変しなければならない。堪水栽培したイネの根では、無酸素状態を回避するため、皮層の一部が崩壊して通気組織が形成され、地上部からの通気が行われる。本年度は、まず、畑作条件下および堪水条件下におけるコムギおよびイネの根の内部構造を比較した。コムギ品種「農林26号」およびイネ品種「日本晴」の発芽種子を、畑作状態のプランターおよび堪水状態のプランターに移植し、28℃連続照明下で10日間栽培した。イネでは両条件下で外部形態の差異は見られなかったが、コムギでは堪水条件下で、地上部の生育阻害が見られた。また、堪水条件下におけるコムギ種子根では、側根の形成が著しく阻害されていた。次に、種子根の基部から約1cmの部分の横断面をマイクロスライサー(主要設備)で作成し、光学顕微鏡で観察した。イネでは両条件下で根の内部構造に違いは見られず、通気組織が形成されていた。一方、コムギでは両条件下で通気組織の形成は見られなかったが、堪水条件下では、表皮と皮層が部分的に剥離していた。この部分が不完全ながら通気の働きをすると思われ、無酸素条件に対する根の適応的応答の一つと考えられる。また、堪水条件下のコムギ種子根では、本来、中央に一個ある大導管が二個形成されていた。原生木部と原生篩部に差異は見られなかったが、堪水条件下では、皮層細胞が不安定形に膨張していた。このようなコムギ種子根の形態異常は、堪水条件下における無酸素状態によって誘発されたと考えられる。
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