2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11876003
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
村井 耕二 福井県立大学, 生物資源学部, 助教授 (70261097)
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Keywords | コムギ / 耐湿性 / 湛水適応性 / 通气組織 |
Research Abstract |
耐湿性はわが国のコムギ栽培において重要な育種目標の一つであり、水田の有効利用の観点からも、ますますその重要性が高まると思われる。本研究では、高度耐湿性の機構を解明する第一段階として、耐湿性コムギ系統の湛水適応性を評価するとともに、湛水適応性と根の通気組織形成との関係を明らかにした。1986年から88年にかけて、農水省中国農試および岡山大農生研(現資生研)により実施された幼植物検定法による耐湿性検定試験において、耐湿性強と評価されたパンコムギ系統10系統および「Chinese Spring」の湛水適応性を評価した。その結果、湛水適応性には明らかな系統間差が見られ、湛水栽培(W)区では生育途中で枯死する系統(湛水適応性低)、W区でもほとんど生育障害の見られない系統(湛水適応性高)、W区で到穂するものの稈長や種子稔性に障害の現れる系統(湛水適応性中)が存在した。湛水適応性強の「U-1339」および「中国農試品保660」、中の「フクホコムギ」、弱の「ISKRA」について幼植物の各形質を調査したところ、根系の発達と湛水適応性との関連が示唆されたが、4系統とも同様に通気組織の形成が見られた。幼植物検定による耐湿性評価が強の系統間で、全生育期間を通じた湛水適応性に差異が認められることは、幼植物と成植物における耐性機構が異なることを示唆する。また、湛水適応性と幼植物の根の通気組織形成との関連は認められなかったことから、湛水状態における根系の発達に通気組織形成が必ずしも関与していないことが示唆された。本研究の結果、異なるoriginの湛水適応性強の系統が見い出されたことから、これらの交雑後代から、さらに湛水適応性が強い系統の育成が可能であると考えられる。
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