2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11876015
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
南澤 究 東北大学, 遺伝生態研究センター, 教授 (70167667)
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Keywords | イネ / 窒素固定 |
Research Abstract |
前年度、野生イネおよび栽培イネの種子および茎から、改変Rennie(RMR)培地を用いてアセチレン還元活性を示す窒素固定菌を多数単離し、16S rRNA遺伝子に基づく分子系統解析を行ったところ、Herbaspirillum属、Ideoonella属、Enterobacter属、Azospirillum属細菌の窒素固定菌が分離された。窒素固定エンドファイトとして報告のあるHerbaspirillum属が野生イネ種子および茎から分離されたので、Herbaspirillum属をGFP標識を行い、分離されたイネの組織定着性を検討した。幼植物段階では、いずれも10^7-10^9オーダーの接種菌が定着していた。電子顕微鏡や蛍光顕微鏡による観察でも、地上部の細胞間隙に接種菌がコロナイズしていた。Herbaspirillum菌を接種したイネ幼植物のアセチレン還元活性(窒素固定活性)は、菌株により異なっていた。 種子から分離されたGFP標識Herbaspirillum属細菌を接種したイネを登熟期まで栽培し、組織内定着を経日的に追跡したところ、地上部に10^6-10^7のオーダーで約2ヶ月目まで存在していたが、4ヶ月目の登熟期の葉茎、登熟種子には検出されなかった。昨年度、野生イネ種子からのみHerbaspiriilum属窒素固定菌と推定される計数値が得られたことを考えあわせると、Herbaspiriilum属窒素固定エンドファイトが、種子を介して次世代のイネに伝達される現象は、常に起こる厳密なものではなく、環境条件により変動すると考えられた。野生イネは多年生の性質が強く、種子伝達というよりはむしろ栄養体で広がる可能性が高いと考えられた。 前年度から種子や茎に窒素固定菌の高いMPN計数値が得られるにもかかわらず、窒素固定菌の分離で困難を極める場合があった。その理由は、複数の菌が存在する場合に窒素固定能が発現するためであることが分かり、本研究は当初予期していなかった方向への研究展開が始まりつつある。
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