1999 Fiscal Year Annual Research Report
フィチン酸割合が低く有効態リン酸の多いトウモロコシ品種の開発
Project/Area Number |
11876055
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
実岡 寛文 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (70162518)
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Keywords | ソルガム / トウモロコシ / フィチン酸リン / RAPD / リン酸 |
Research Abstract |
トウモロコシおよびソルガム子実は,家畜の飼料として大量に利用されている。子実中のリン酸の貯蔵形態はフィチン態であり,このフィチン態リン酸は鶏,豚などの非反芻家畜に吸収利用されない。このため大量のリン酸が糞や尿として環境中に排泄され環境汚染の原因となっていることから,フィチン酸濃度の低い品種の開発が望まれている。本研究はトウモロコシおよびソルガム子実のフィチン態リン酸などを測定し,フィチン酸割合が低く有効態リン酸の多いトウモロコシおよびソルガム品種の開発を行うための基礎資料を得ることを目的に実施した。本研究ではまずフィチン酸割合の低いトウモロコシおよびソルガム系統を選抜するために長野県中信農業試験場育成のトウモロコシ26系統,広島県農業技術センター育成のソルガム500系統の子実についてフィチン態リン酸,無機リン酸を測定した。その結果,トウモロコシ子実の全リン酸濃度は2.2〜4.3%,全リン酸にしめるフィチン態リン酸濃度は75.0〜85%であり,子実中のリン酸の大部分がフィチン態リン酸として存在している。DNAフィンガープリントによるRAPD分析の結果,フィチン酸割合の低いトウモロコシ品種が選定できた。ソルガム子実の全リン酸濃度は乾物あたり3.0〜4.5%,また全リン酸にしめるフィチン態リン酸濃度は46〜83%で大きな系統間差が見られ,低フィチン酸系統が選抜できた。これらの系統はフィチン酸割合の低い品種を開発する上での育種素材として有望であることが示唆された。 一方,トウモロコシにリン酸施肥量を変えた条件下で栽培し,子実フィチン態リン酸を測定した結果,リン酸施肥量の増加にともないフィチン態リン酸および全リン酸に対するフィチン態リン酸の割合も増加した。この結果,土壌のリン酸の状態など環境条件の変動が子実フィチン酸割合に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。
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