2000 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚腫瘍におけるWntシグナル構成分子の発現異常の検討および遺伝子導入による治療
Project/Area Number |
11877141
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Research Institution | 山梨医科大学 |
Principal Investigator |
島田 眞路 山梨医科大学, 医学部, 教授 (10114505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 敦 山梨医科大学, 医学部, 助手 (30225693)
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Keywords | Wntシグナル / β-catenin / 石灰化上皮腫 |
Research Abstract |
我々は皮膚腫瘍におけるWntシグナル構成分子の発現異常を検討するため、石灰化上皮腫におけるβ-cateninの発現異常に注目した。 石灰化上皮腫は毛母由来の皮膚腫瘍であるが、分子生物学的手法を用いた研究により石灰化上皮腫の発生にWntシグナルが関与していることが示唆されている。石灰化上皮腫から取り出したDNA内に高率にβ-catenin遺伝子の異常が見出されており、この遺伝子変異はβ-cateninのリン酸化部位をコードする部分に認められる。リン酸化部位はβ-cateninの分解に重要であるため、腫瘍細胞内にβ-cateninが過剰に蓄積し、その結果としてWntシグナルが活性化している可能性が示唆されている。しかし、現在まで石灰化上皮腫の腫瘍細胞にβ-cateninの蓄積の証明をした報告はない。 そこで、我々は石灰化上皮腫における腫瘍細胞へのβ-catenin蛋白の蓄積を検索した。患者より摘出した石灰化上皮腫のホルマリン固定後のパラフィン切片を用いて免疫組織染色を施行した。使用した抗体は抗β-cateninモノクローナル抗体で、ABC法によりβ-catenin蛋白を検出した。その結果、検索した石灰化上皮腫全てにおいてbasophilic cellの核にβ-catenin蛋白が蓄積していることが証明された。さらにβ-catenin蛋白の蓄積量はshadow cellに移行するに従い減少していった。 マウスの毛母細胞にβ-catenin蛋白を過剰に発現させると石灰化上皮腫様の腫瘍が発生することは報告されていたが、ヒト石灰化上皮腫でβ-catenin蛋白が蓄積していることを直接的に証明した報告はなされていなかった。今回、我々は免疫組織学的にこのことを証明することに成功した。この結果はWntシグナル伝達系と皮膚腫瘍の発生の関係を直接的に結びつける興味深い結果と考えられる。
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