1999 Fiscal Year Annual Research Report
アンチセンスを用いた腫瘍の放射線感受性増強に関する基礎的研究
Project/Area Number |
11877150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹井 啓資 京都大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (20225858)
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Keywords | PI3キナーゼ / アンチセンス / ワルトマニン / 放射線感受性 / p85 |
Research Abstract |
PI3-kinase familyを特異的にブロックするワルトマニンが、細胞の放射線感受性を増強する事が報告されている。我々は、PI3-kinaseのサブユニットであるp85のミュータントを細胞内に導入する事により、細胞の放射線感受性が上昇することを明らかにした。これは、ミュータントp85がdominant negativeに作用しPI3-kinaseを特異的にブロックすることが原因と考えられた。もし、簡単にPI3-kinaseを簡単に阻害する方法が開発されれぱ、放射線効果の増強が期待できると考えられた。本研究は、放射線感受性に影響する遺伝子に対するアンチセンスDNAを用いることにより細胞の放射線感受性を制御する事を目的とし、PI3-kinaseのサブユニットであるp85にたいするアンチセンスを中心に検討した。まずミュータントp85を発現ベクターに導入し、これを強勢発現するヒト膠芽腫細胞(T98およびA172細胞)、ヒト悪性黒色腫細胞(G361)の発現クローンを得た。ミュータントp85を過剰発現するクローンは、親株より放射線・抗癌剤に対し著しい高感受性を示した。放射線照射後では、細胞生存曲線の直線化が認められ、分割照射によるsublethal damage repairの著明な減少も認められた。細胞死分画では、ほとんどアポトーシスを起こさない細胞株に、アポトーシスを強力に誘導できた。また、放射線照射後も細胞周期停止をほとんど示さない細胞株に、G1アレスト、G2アレストを誘導できた。次にp85に対するアンチセンスSオリゴヌクレオチドを用いてp85の発現を抑えることによって、同様の増感が見られるか検討するために、同アンチセンスを作成した。アンチセンス設定に際しては、アンチセンス自体の二次・三次構造、塩基配列の特徴、分子内・分子間での相互作用、交差相同性を考慮したコンピュータによる最適領域の設定を行った。今後、同アンチセンスを用いて細胞に対する放射線および抗癌剤の効果を検討する。
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