1999 Fiscal Year Annual Research Report
代謝拮抗剤5-FUによるDNA障害の機構とミスマッチ修復能の関与 ―マイクロサテライト不安定性は5-FU感受性予知因子となりうるか―
Project/Area Number |
11877200
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前原 喜彦 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80165662)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 聡 九州大学, 医学部, 医員
徳永 えり子 九州大学, 医学部, 助手
|
Keywords | ミスマッチ修復 / マイクロサテライト不安定性 / 5-FU / DNA障害 |
Research Abstract |
本研究では、5-FUの作用機序におけるDNA障害機構とミスマッチ修復能の意義を解明し、マイクロサテライト不安定性解析におけるミスマッチ修復能の検索が、5-FU感受性の予知因子となりうるのか決定する基礎データの集積を目的とする。本年度は、ミスマッチ修復能の判明している種々の大腸癌細胞株を用いて、5-FU感受性とミスマッチ修復能との関連について解析を行った。この際、5-FUによる細胞のDNA障害の情報伝達分子であると考えられるp53の発現や5-FUの標的酵素と考えられるチミジル酸合成酵素(TS)の活性や発現、5-FUによるRNA障害や細胞周期の変化などの詳細な検討も加え、5-FU感受性におけるミスマッチ修復能の意義を考察した。その結果、p53は細胞周期の変化には関与しているが直接感受性を規定するものではないこと、TSがほぼ抑制されている状態では、ミスマッチ修復異常細胞はミスマッチ修復正常細胞よりも5-FU感受性が低いことが明らかになった(投稿中)。さらに我々はミスマッチ修復遺伝子MSH2のノックアウトマウス由来の胚線維芽細胞を用いて5-FU感受性を解析した。MSH2欠損細胞株は正常胚線維芽細胞株よりも有意に5-FU感受性が低いことがわかった。今後はこれらのミスマッチ修復遺伝子欠損細胞にミスマッチ修復遺伝子を導入し、ミスマッチ修復能を回復した細胞の5-FU感受性の変化も観察したい。さらに他のミスマッチ修復遺伝子ノックアウトマウス由来の細胞を用いて同様の検討を加える予定である。 また、ミスマッチ修復の異常を評価する目的で従来から正確なマイクロサテライト不安定性解析法を確立してきたが、臨床例の解析も既に800例を超えた。今後はマイクロサテライト不安定性により評価した各症例のミスマッチ修復能と抗癌剤感受性試験などで得られた5-FU感受性との関連性の解析も進めていきたいと考える。
|
-
[Publications] 沖 英次 他: "Mutated gene-sprcific phenotype of dinucleotide repeat instability in human colorectal carcinoma cell lines deficient in DNA mismatch repair."Oncogene. 18. 2143-2147 (1999)
-
[Publications] 徳永えり子 他: "Frequency of microsatellite instability in breast cancer determined by High Resolution Fluorescent Microsatellite Analysis."Oncology. (in press).