1999 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外分光法による大血管手術中の脊髄虚血モニタリング
Project/Area Number |
11877221
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松居 喜郎 北海道大学, 医学部・附属病院, 助教授 (90219379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椎谷 紀彦 北海道大学, 医学部・附属病院, 助手 (00250449)
安田 慶秀 北海道大学, 医学部, 教授 (60125359)
国原 孝 北海道大学, 医学部・附属病院, 医員
村下 十志文 北海道大学, 医学部, 講師 (20261290)
佐々木 重幸 北海道大学, 医学部・附属病院, 講師 (10270787)
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Keywords | 近赤外分光法 / 脊髄誘発電位 / 経食道的モニタリング / 胸腹部大動脈瘤 |
Research Abstract |
大血管外科領域における現在の最大の課題は胸腹部大動脈瘤手術における脊髄保護である。今回脊髄虚血モニターとして無侵襲性、簡便性、連続性などの点より近赤外分光法(NIRS)を用い、術中モ二夕ーとしての臨床応用を目指した。本年度はイヌにおいてNIRSによる経食道的脊髄虚血評価の妥当性を検討した。 7頭のビーグル犬を用い、全身麻酔、気管内挿管下に上下肢の血圧、心拍数、直腸温を連続モニタリシグした。次に腹臥位として胸・腰椎硬膜外腔に脊髄誘発電位(ESP)測定用の刺激・導出電極を挿入。さらに右側臥位とし、左開胸にて胸部下行大動脈、左鎖骨下動脈をテーピングした。NIRS(INVOS4100)の送受光プローべを脊髄側へ向けて経食道的に胸椎前面に留置した。胸部下行大動脈、左鎖骨下動脈を20分間遮断し、遮断解除10分後までNIRSで測定した脊髄の組織酸素飽和度(rSO2)の変動を連続的に記録し、同時に1分毎にESPの波形を記録した。 その結果、5頭のイヌではESPの電位は遮断20分後まで経時的に低下し、これより早くNIRSではrSO2が急激に低下し、約5分で定常状態となった。遮断解除後、これらは速やかに遮断前値に復した。一方、ESPの電位がほとんど変化しなかった2頭では、1頭ではrSO2がほとんど変化せず、もう1頭ではrSO2は遮断前値より高値と低値を交互に記録し、その低値は他の5頭の平均値より高かった。 以上の結果より、NIRSで測定したrSO2の変化はESPの電位の変化を反映しており、従ってNIRSが経食道的に脊髄虚血を捉えている可能性が示唆された。しかもその変化はESPよりも鋭敏で、臨床においてより迅速で確実な脊髄虚血モニターとなることが期待され、今後の本研究の発展が期待される。 本研究の成果は第6回医用近赤外線分光法研究会(99/12/10広島)で発表した。
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