2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11877224
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
矢田 公 三重大学, 医学部, 教授 (80093152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島本 亮 三重大学, 医学部・附属病院, 助手 (90324524)
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Keywords | 拡張型心筋症 / 細胞内シグナル伝達 / p38MAPK / FR167653 / IL-1β / MCP-1 / マクロファージ |
Research Abstract |
【目的】拡張型心筋症は最終的な治療法として心臓移植が挙げられるが、移植医療には深刻なドナー不足など様々な問題点もある。一方、内科的な心不全のコントロールには限界があり、また近年始められたBatista手術は、長期成績での問題が挙げられる。サイトカインが心肥大や心不全に関与していることは最近の知見で明かとなり、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1βの発現には細胞内シグナル伝達系におけるp38MAPKの関与が示唆されており、抗サイトカイン療法として細胞内シグナル伝達系の制御が注目されている。そこでわれわれは、拡張型心筋症におけるp38MAPKの関与、及び抗サイトカイン療法の効果を評価した。【方法】ダール食塩感受性ラットによる拡張型心筋症モデルを作製し、p38MAPKであるFR167653(10mg/kg/day)を高血圧期(7週齢)、求心性心肥大期(11週齢)、及び代償性心拡大による心不全期(15週齢)より投与(腹腔内)、非投与群を含めた4群において19週齢に超音波検査による心機能評価、左室心筋組織におけるTNF-α、IL-1β、MCP-1のmRNAの測定(定量RT-PCR法)、左室心筋組織における病理組織学検討(免疫組織学的染色法を用いたマクロファージ集積度、線維化の進行度の評価)、及び22週における生存率を検討した。【結果】心機能は、投与群にて有意な改善が見られた。IL-1βmRNAの発現は、投与群にて有意(p<.01)に抑制された。病理組織所見では投与群にて心筋細胞間質におけるマクロファージの集積及び線維化が抑制された。22週における生存率は非投与群0%に対し、7週齢投与群90%(p=.015)、11週齢投与群50%(p=.032)と有意な上昇を認めた。【結論】拡張型心筋症における心肥大及び心不全は、マクロファージの集積を伴うp38MAPKを介したMCP-1、IL-1βの発現による機序が示唆された。また、細胞内シグナル伝達系におけるp38MAPK制御による心肥大及び心不全の抑制が示唆された。
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