1999 Fiscal Year Annual Research Report
環境化学物質の脳機能発達に与える影響についての解析
Project/Area Number |
11877399
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
今村 理佐 富山医科薬科大学, 薬学部, 助手 (10232620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 正明 富山医科薬科大学, 薬学部, 教授 (80132736)
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Keywords | 殺虫剤 / 小脳顆粒細胞 / c-fos / 脳由来神経栄養因子 / DDT / ペルメトリン / ミトコンドリア / アポトーシス |
Research Abstract |
初代培養細胞及び生体脳を用いて、環境化学物質である殺虫剤の神経機能発達に対する影響の検討を試みた。 1.培養細胞系における検討 マウス小脳顆粒細胞ニューロン初代培養系では、培地中のKC1濃度を25mMから5mMに落とすとアポトーシスによる神経細胞死が誘導される。その後5mMから再び25mMに戻して再脱分極を起こすと、細胞内Ca^<2+>流入依存的にc-fosや脳由来神経栄養因子BDNFの遺伝子が活性化され、細胞死が抑制される。この系を用いて、母乳から乳児へと移行すると考えられる殺虫剤の遺伝子発現に与える影響を検討した。その結果、25mMKClやNa^+チャネル賦活剤ベラトリジンで脱分極を起こすとCa^<2+>流入依存的にc-fosやBDNF遺伝子発現が誘導された。この誘導は、DDTやピレスロイド系殺虫剤であるペルメトリン、シぺルメトリン、デルタメトリン、フェンバレレートの前処置により阻害された。また、DDT及びペルメトリンは、脱分極刺激で誘導された細胞内Ca^<2+>流入を抑制した。さらに、DDTとペルメトリンは、遺伝子発現を阻害する濃度では、細胞生存効果に影響を与えなかったが、細胞内ミトコンドリア活性の指標である、MTT活性やアコニターゼ活性に対して抑制効果を示した。 2.生体脳における検討 出産直後の母親マウスに、ペルメトリンあるいはDDTを連続経口摂取させ、仔マウスの小脳の遺伝子発現レベルを測定した。その結果、生後3週目のペルメトリン投与群でc-fos遺伝子発現の有意な減少がみられた。 以上のことより、種々の殺虫剤が、生存および神経活動に必要な遺伝子発現やミトコンドリア活性を抑制することが明らかになり、これら殺虫剤が、マウス小脳発達に対して影響を及ぼしている可能性が考えられた。
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