1999 Fiscal Year Annual Research Report
運動トレーニングによるヒト遺伝子の傷害とその予防法の運動栄養学的研究
Project/Area Number |
11878004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
徳山 薫平 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (00207565)
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Keywords | 運動 / 酸化ストレス / ミトコンドリアDNA / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
有酸素エネルギー代謝の中心となるミトコンドリアは、核DNAとは別に16,569塩基からなるミトコンドリアDNA(mtDNA)を有する。活性酸素生産の場に近い位置にあることや、核のDNAのように蛋白で保護されてはいないなどの特徴からmtDNAは変異をうけて傷害されやすいDNAであると考えられている。本年度は、日本人学生32名の白血球mtDNAのD-loop全領域の塩基配列を決定し、一流長距離ランナーのと一般学生の比較を行った。Andersonらによって報告されているヒトmtDNAを標準配列とし、これと比較して異なる塩基配列は、D-loop全領域において1.05±0.07%(12.2±0.2bp/1,122bp)であり、比較的多数の個人差が確認された。また、mtDNA複製を担う2つのプロモーター領域の塩基配列は高度に保存されていたが、その間の領域(385bp)にはより多くの個人差が認められ、これを含まない領域(737bp)に比べて有意に高い値が得られた(それぞれ0.93±0.07%、1.28±0.07%、p<0.01)。また、標準配列と異なる塩基の数は長距離ランナーと一般学生との間に差は認められなかったが、出現頻度が長距離ランナー(17.6%)と一般学生(53.3%)との間で異なる多型が見い出された。 これらの結果は当初の危惧「トレーニングによる酸化ストレスが遺伝子の傷害を引き起こしている可能性」を支持しないものであるが、平成12年度には更にDNAの傷害に特異的な代謝マーカーの測定を行いこの点について更に確かめる予定である。
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