1999 Fiscal Year Annual Research Report
家族の少子化と情緒化に関する研究-近・現代日本における性と生殖の視点から
Project/Area Number |
11878014
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
宮坂 靖子 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授 (30252828)
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Keywords | 死産率 / α・I(アルファ・インデクス) / β・I(ベータ・インデクス) / 乳児死亡 / マビキ / 親子関係の情緒化 / 地域差 |
Research Abstract |
本年度には、具体的研究を開始するための基礎作業として、1899〜1925年における(公表された)道府県別の「死産率」「α・I」「β・I」の(公表された)統計を概観し、人口動態統計という公式統計の利用可能性とその問題点を把握することと、地域別の特性を明らかにすることを目的とした。主な分析資料は、内閣統計局編『日本帝国人口動態統計』、丸山博編『本邦乳児死亡統計40年』(乳幼児問題研究資料第2集)である。 まずこれら3指標を用いて、道府県のグルーピングを行った結果、(1)「死産率」「β・I」高位/「α・I」低位(茨城、栃木、静岡、岡山)、(2)「α・I」高位/「死産率」「β・I」低位(青森、東京、大阪、山口、愛媛、熊本、大分、沖縄、(3)「死産率」「α・I」「β・I」ともに高位(神奈川、山梨、長野、島根、(4)「死産率」「α・I」「β・I」ともに低位(北海道、山形県、香川県)、の4グループに大別できた。中でも、母胎内環境による(もしくは先天性)死亡が多い(1)と、生育環境の問題による死亡が多い(2)の対照性が特徴的である(後者は、都市部および九州・沖縄地方に多く見られる)。(1)においては、妊娠率自体が低かったという可能性と、他方でマビキの存在した可能性も示唆されていると考えられる。逆に(2)においては死産を抑制するメカニズムが存在した可能性とともに、子どもの存在や育児そのものに置かれた価値が低かった(親子関係の情緒性の未発達)可能性も併せて考えられる。 以上の通り、第1の目的に関しては、九州・沖縄地方に登録漏れの問題が多ことが推測された。特に、沖縄県、鹿児島県、熊本県の数字は信憑性に欠けることがわかった。第2の目的に関しては、4グループの特徴を抽出することができた。
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