1999 Fiscal Year Annual Research Report
社会科教育における態度概念の論理分析に関する基礎研究
Project/Area Number |
11878041
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
兒玉 修 宮崎大学, 教育文化学部, 助教授 (60136801)
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Keywords | 社会科教育 / 社会認識 / 態度 / 傾向語 / コミットメント |
Research Abstract |
社会科教育は理念的には社会認識と市民的資質との統一的育成をめざす教科であると言われているが、市民的資源の中核部分を占める態度と社会認識(社会について知ること)との関連についてはこれまで明確な分析は行われてこなかった。本研究は、両者の関連を理論的に分析することによって、従来の態度概念が抱えていた問題の克服を主要課題とする。 本年度の研究においては、英米系の分析哲学・倫理学・記号論等の成果に基づいて、次のような社会科教育における態度概念にかかわる問題点を明らかにした。社会認識の育成と態度の育成との時間的な隔たりに関する恣意的な想定、及び、授業における社会認識の結果として生起する態度と授業において行使される態度との区別に対する無自覚が態度概念に混乱をもたらしていること、態度と行動の異同に対する無自覚、及び、態度と学習者の意図・動機・願望といった一定の心理的出来事との同一視が態度と社会認識とのつながりを不明確にしていること、態度と規範・ルールとの同一視が社会認識と社会認識の正当化のレベルとの違いを不明確にしていること、等である。また同時に、態度概念からできるだけ論理的な混乱を取り除くためには、態度を基本的には、「〜であれば、〜であろう(するであろう、できるであろう)」といった命題で表されるような「傾向後」として、及び、「〜同意するならば、〜にも同意せざるをえない」といった命題で表されるような「論理的コミットメント」として捉えることが有効ではないかという仮説を構築した。 今後の課題は、この仮説と「コミットメント」概念のさらなる明晰化に基づいて、主として学習者が社会科授業で論理的(あるいは合理的)に考える際の「主張内容」を分析することによって、そこでの態度が現実社会の特定の価値理念(「正義」 「公正」等)とどのように関連しているかを明らかにすることである。
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