1999 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク質相互作用の1分子レベルでのイメージング、ナノマニピュレーション
Project/Area Number |
11878125
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石島 秋彦 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (80301216)
|
Keywords | レーザートラップ / ナノマニピュレーション / 人工平面膜 / 脂質 / 拡散定数 / 1分子計測 / 鞭毛モーター |
Research Abstract |
膜タンパク質の研究においては、1分子レベルでの観察、操作といった研究はほとんど手つかずの状況である。これは、膜タンパク質が脂質二重膜という特殊な環境下のみで機能を発現できるため、顕微鏡下で人工的に再構成することが困難であるためと考えられる。 本研究では、1分子イメージング、1分子ナノ操作システムに人工平面膜作成技術を利用し、顕微鏡上で直接観察、測定するが可能な脂質二重膜を形成させることを試みた。テフロンの薄板に直径約100ミクロン程度の穴をあけ、デカン、もしくはデカン-クロロホルム溶媒に分散させた脂質を穴に添加した。穴に張られた脂質分子は最初バルク状態であるが、しばらく放置すると中央部に新たなエリアが形成されるようになる。このエリアが脂質二重膜であると考えられる。 この二重膜が生体中と同じ状態であるかを確かめる目的で、その流動性に着目した。1分子の脂質分子の運動を見るために、平面膜にあらかじめごく微量のビオチン化した脂質分子を混入し、アビジン化したビーズを結合させ、ビーズの運動から脂質分子1分子の流動性を評価した。また、レーザートラップ技術を用い、ビーズと平面膜状の脂質との結合を促進した。 このようにして、平面膜状に結合したビーズの運動を計測することにより、平面膜の拡散定数を見積もることに成功した。その結果は以前の別の手法による結果とほぼ一致するものであった。また、コレステロールを添加することによって、ゲル層の膜の流動性が上昇することが以前から知られているが、平面膜にコレステロールを添加することにより、流動性が上昇することも確認できた。こられの研究から、光学顕微鏡上で平面膜を観察、操作するために基礎技術を確立することができた。現在、この平面膜に鞭毛モーターを組み込み、その回転運動を直接観察することを試みている。
|
-
[Publications] Akihiko Ishijima: "Simultaneous Measurement of Individual ATPase and Mechanical Reaction by a Single Myosin Molecule at Work"Optical Review. Vol.6. 16-23 (1999)
-
[Publications] 石島 秋彦: "ナノ領域の光の生物への応用-生体分子1個の化学反応と力学反応の同時計測-"応用物理. Vol.68. 556-560 (1999)
-
[Publications] 石島 秋彦: "生体分子1個のイメージング、ナノ操作"病理と臨床. Vol.16. 1005-1011 (1998)
-
[Publications] 石島 秋彦: "生体分子機能の1分子イメージング"蛋白質核酸酵素. Vol.43. 1365-1371 (1998)