2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11CE2002
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉野 直行 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (50128584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹森 俊平 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (30179676)
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90265918)
池尾 和人 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00135930)
津谷 典子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (50217379)
友部 謙一 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (00227646)
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Keywords | アジア金融危機 / マクロ計量モデル / 銀行行動 / 海外直接投資 / 為替相場制度 / 金融・財政政策 / 金融資産選択 / 人工構成 |
Research Abstract |
研究実績の概要(当該年度のまとめ) 1、マクロ計量モデルの構築 従来のマクロ計量モデルは、金融セクター(とくに銀行セクター)を含まない、財市場と貨幣市場のモデルであった。本研究では、従来のマクロ計量モデルに銀行部門の行動を明示的に取り入れ、海外からの資金流入が金融機関に流れ込み、銀行・ノンバンクを通じて設備投資、マクロ経済に及ぼす影響の経路を明らかにした。(吉野直行・中田真佐男「銀行行動と設備投資」(mimeo)、吉野直行「金融システムおけるノンバンクの現状とその将来性」(金融システムと法)ジュリスト2000-11))。タイの経済企画庁と共同で、タイマクロ計量モデルを構築中で、共同研究会議を2000年12月に慶応義塾大学で開催。インドネシア・ジョージタウン大学とは、共同研究中で、CGEモデルによる計量分析の研究会議を、2000年3月にジョジタウン大学で開催。 2、為替制度のあり方 香港Economic Association(2000年11月)・オーストラリア国立大学(2000年9月)・イギリスDitcheley Foundation国際会議おいて、それぞれ、固定相場制・バスケット相場制・変動相場制の比較モデルを発表(yoshino,Kaji and Suzuki "Optimal Choice of the Exchange Rate System")。アジア金融危機の原因の一つである固定相場制のもとでの資本自由化は、変動相場制に変更することによって解決される訳ではなく、むしろ、為替変動リスクが増大して、アジアのような経済規模が小さな国にとっては、バスケット為替制度の方が望ましい場合があること、さらに、タイのマクロ計量モデルを用いて、為替バスケットのウェイト(ドル・円のウェイト)を導出した。 3、銀行行動とアジア金融危機 タイ・インドネシア・韓国の危機は、銀行の審査能力の欠如(貸出先企業の内容を審査する能力の欠如)とコーポレートガバナンスの欠如(企業経営を監視する能力の欠如)が原因の一つと言われている(深尾光洋)。銀行行動の脆弱性と不良債権処理機構の創設に関する各国比較、とくに韓国のケースを研究(池尾和人)し、日本との類似性を見出している。また、不良債権の処理だけでは、銀行部門の脆弱性は改善されないことが、韓国の経験から明らかとなっている(財務省での共同研究「外国為替審議会・アジア部会」)。預金保険制度の改革を含めた銀行・金融システムの競争促進を、具体的にどのように進めるかが、次年度以降の研究課題である。 4、アジア金融危機と郵便貯金の役割 銀行部門の脆弱性により、庶民の銀行預金に対する信認が薄れ、タイでは、GSB(国民貯蓄銀行)により、国内貯蓄をなるべく国内投資に向けようとする制度が、金融危機以降、多額の資金を集めている。ベトナムでも、新たに郵便貯金制度が構築され、庶民貯蓄の吸収が始まっている。中国・韓国・インド・国際連合との共同国際会議を2001年1月に慶応義塾大学で開催(吉野直行)した。この成果は、国際連合からの書籍として出版される予定。さらに、日本の2001年4月からの郵貯・財政投融資制度の改革も、アジアに対する今後の郵便貯金制度のあり方として大きな注目を集めており、Cargill教授との共著がOxford大学から、2001年度に出版される予定。 5、アジアの経済発展と社会資本の関係 アジア経済の発展は、都市中心に進んでいる。大都市と地方との格差が大きくなっている。わが国では、戦後の経済成長において、インフラの整備(道路・港湾・鉄道など)が全国的になされ、民間経済活動の基礎を築いた。しかし、アジア各国では、インフラの整備が未だ不十分であり、かつ、中央(大都市など)と地方との貧富の差が大きくなっている。(吉野直行・中東正樹、世界銀行Global Development Network2000)第二次産業の育成を目的とするインフラ整備は、農業インフラ整備よりも経済効果が高いことが、タイに関しては、明らかとなった。
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Research Products
(35 results)
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[Publications] 吉野直行: "ゼロ金利政策・財政投融資改革と地方債"地方債月報. 5月号. 14-20 (2000)
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[Publications] 吉野直行: "アジア金融危機とそのマクロ経済政策の対応"三田評論. 6月号. 22-28 (2000)
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[Publications] 吉野直行: "日本金融・世界の金融(シンポジウム)"Journal of Financial Planning. Vol.2 Issue10. 12-15 (2000)
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[Publications] Yoshino,Naoyuki: "Widening Houshold Savings Portfolios"LOOK JAPAN. Vol.45 No.531. 16-17 (2000)
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[Publications] 吉野直行: "地域協力で通貨危機を防止"為替情報. 11499号. (2000)
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[Publications] 吉野直行: "アジアの金融再生支援を"日本経済新聞朝刊. 7/3. (2000)
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[Publications] Yoshino,Naoyuki: "Public Banking in Germany and Japan's Fiscal Investment and Loan Program : A Comparison"Duisburger Arbeitspapiere Zur Ostasienwirtschaft. No.54. (2000)
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[Publications] 吉野直行: "財政投融資改革と今後の公的住宅金融"住宅土地経済. Autumn No38. 20-27 (2000)
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[Publications] 吉野直行: "社会資本の経済効果-日本の戦後の経験"開発金融研究所報. 11月号. 4-20 (2000)
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[Publications] 吉野直行: "金融システムにおけるノンバンクの現状とその将来性"ジュリスト増刊. 11月号. 121-126 (2000)
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[Publications] Yoshino,Naoyuki: "Economic Effects of Infrastructure-Japan's Experience after World War II-"JBIC Review. No.3. 3-19 (2000)
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[Publications] 吉野直行: "パーソナル・ファイナンスで変わるEPコンサルティング"ビジネスガイド別冊EPサポート. 1月号. 4-8 (2001)
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[Publications] 吉野直行: "国際市場改革、英に学べ"日経金融新聞朝刊. 1/17. (2001)
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[Publications] 友部謙一: "近世都市長崎における人口衰退について"三田学会雑誌. 92巻1号. 81-103 (2000)
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[Publications] 友部謙一: "近世中後期の人口"人口学辞典. (2001)
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[Publications] 友部謙一: "プロト工業化と人口"人口学辞典. (2001)
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[Publications] 友部謙一: "徳川農村における「出生力」とその近接要因について"「近代化における人口と家族」速水融 編. (2001)
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[Publications] 友部謙一: "人口と家族・徳川前期の人口増加と「家」による危機管理"「家族へのまなざし」飯田裕康 編. (2000)
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[Publications] 友部謙一: "歴史のなかの市場経済"徳山大学総研レビュー. 17号. 40-46 (2000)
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[Publications] 友部謙一: "近世・近代日本農村における「家族労作」経営の分析"日本史学年次別論文集. 日本史学一般編. 790-810 (2001)
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[Publications] 池尾和人: "韓国「財閥」の企業金融と企業統治"通産ジャーナル. 12月号. 36-39 (2000)
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[Publications] 池尾和人: "韓国「財閥」の企業統治構造"三田商学会. 43巻6号. 43-66 (2001)
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[Publications] 細田衛士: "建設廃棄物の経済学的側面"廃棄物学会誌. 第11巻2号. 105-116 (2000)
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[Publications] Hosoda,Eiji: "Material Cycle, Waste Disposal and Recycling in a Leontief-Sraffa-von Neumann Economy"Journal of Material Cycles and Waste Management. Vol.2. 1-9 (2000)
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[Publications] 嘉治佐保子: "グローバルスタンダードを採用しない限り、アジア金融危機は再燃する"日本の論点2000. 論点14. 132-135 (2000)
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[Publications] Kaji,Sahoko: "La fin du Japon que nous avons connu"L'economie politique. No.6. 88-93 (2000)
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[Publications] 嘉治佐保子: "ユーロはいかにして成った-アジア通貨体制への示唆-"三田学会雑誌. 93巻1号. 139-160 (2000)
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[Publications] 嘉治佐保子: "国際通貨としてのユーロ-導入二年後の評価"三田学会雑誌. (2000)
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[Publications] Endo,Masahiro: "The transition of postwar Asia-Pacific trade relations"Journal of Asian Economics. Vol.10 No.4. 571-589 (2000)
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[Publications] Endo,Masahiro: "The Formation of customs unions and the effect on government policy objectives"Economia Internazionale. Vol.53 No.3. 299-320 (2000)
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[Publications] 深尾光洋: "Recapitalizing Japan's Banks : The Functions and Problems of Financial Revitalization Act and Bank Recapitalization Act"Keio Business Review. No.38. 1-16 (2000)
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[Publications] 深尾光洋: "Recapitalizing Japan's Banks : The Functions and Problems of Financial Revitalization Act and Bank Recapitalization Act"Keio Business Review. No.38. 1-16 (2000)
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[Publications] 秋山裕: "アジア金融危機と貿易"三田学会雑誌. 94巻1号. (2001)
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[Publications] 新保一成: "東アジア経済の相互依存と地球温暖化防止"「地球環境保全の制度設計」清野一治,新保一成 編著. (10月予定). (2001)
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[Publications] 吉野直行: "英語で読む日本の金融"有斐閣. (2000)