2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国の民族政策と民族問題に関する研究-1949-1976年の内モンゴル
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11F01001
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
加々美 光行 愛知大学, 現代中国学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
愛知大学, 国際中国学研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 国民統合 / 過渡期 / 天下 / 文化大革命 / 内蒙古モンゴル人 / 第2世代民族政策 / 郷土意識 / 利己と利他 |
Research Abstract |
1.「研究目的」では、文革期までに中国は国民統合原理の衰弱の危機に直面、これを「天下」原理の再生により克服しようとする「過渡期」にあるとの「仮説」に立ち、面接取材及び関連資料の収集により論証を行うとした。「実施計画」では内蒙古から日本に長期留学中のモンゴル人学生に取材、さらに夏休み後に内蒙古現地に出張しモンゴル人研究者に取材することで「仮説」の論証の材料を確保するとした。 2.成果の具体的内容:3-1.留学生の取材は2011年11月から12月にかけ東京で4回実施。対象学生は東京外国語大学5名、東京農工大学2名、東京大学、首都大学東京、東京学芸大学、各1名の計10名。3-2.内蒙古現地での研究者への取材は研究代表者の健康悪化のため実現出来なかった。しかし研究分担者が2011年9月内蒙古から本学に赴任する直前、内蒙古大学〓維民教授と同研究室の3名に取材を行うことが出来た。 3.その意義:文化大革命末期、内蒙古自治区の総人口中、モンゴル人は17%に減少し、80%は漢民族が占めるに至った。留学生への面接取材結果はその状況を反映し留学後に「内蒙古への帰郷を望む者」が2名、「帰郷を望まない者」が8名に達した。帰郷を望まない理由は8名全員が「文革を境に内蒙古では自分の能力が発揮できなくなった」とした。ただ上海、北京など大都市への帰国を望む者も6名あった。さらに現地の〓維民教授グループの取材では現在、中国の「民族区域自治」政策が民族の「利己主義」を助長し「利他」を顧みない傾向を生んでいるとする議論が「第2世代民族政策」と称して現れていることが批判的に紹介された。民族政策はこの意味から「過渡期」にあるという評価が重要である。 4.その重要性:5-1,文革を境にモンゴル人の内蒙古への郷土意識の衰弱が顕著に見られたこと。5-2.郷土意識の衰弱は「中国」への「利他」的貢献意識を破滅させるものではなく、特にモンゴル人研究者間に中国を国家としてではなく「天下」世界と捉える「過渡期」の意識がある点が重要な知見だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の健康問題により、モンゴル現地への出張がかなわなかったことが、当初目的の十全な達成を難しくさせた。ただし研究分担者による現地取材および研究代表者と共同による日本本国内での取材が成果を上げ、所期の目的をほぼ達成することが出来た。さらに資料収集面では、中国内蒙古の民族政策が「過渡期」にあること、とくに草原管理の政策が民族問題に投げかけている「流動的な諸矛盾」を知りうる第一級の資料が収集できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究代表者の健康状態も考慮して、内蒙古現地出張取材は主に研究分担者が遂行する。しかし取材に当たっては研究代表者が取材先と事前に電話、手紙で綿密に連絡を取り、可能ならばテレビ電話を使用して直接取材に参加する方式をとる。さらに今後も日本国内の内蒙古出身の研究者、留学生からの取材を継続する。資料面では今後も研究分担者(モンゴル人)を通して、日本人研究者にはアクセスが難しい内蒙古関係の貴重資料をよりいっそう集中して収集することを目指す。
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Research Products
(8 results)