2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11F01006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村井 章介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OLAH Csaba 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 日明外交文化 / 朝貢貿易 / 室町時代 / 牙行 |
Research Abstract |
(1)史料調査及び史料分析、(2)現地調査という二つの形で研究を進めてきた。 (1)遣明使節の中国における活動については、詳細な研究が希少であることが現状である。本研究の意義は、この研究状況による穴を埋め、「日明外交文化」というタームを提示して遣明使節の活動の実像に迫ることにある。 研究実績は以下の通りである。 遣明使節の外交・貿易活動の実態を把握し、他国使節の活動との比較を行うために、入明記という旅行記及び外国使節の活動について記されている中国側史料の記事を収集・分析した。その結果、明側の待遇のありかたや朝貢品点検・納入の制度、回賜制度に対する理解が一層深まった。また、遣明使節は、中国側の態度を、「日明外交文化」の規則に反する異常な行為であるとしばしば批判し、それを受け入れない姿勢を示したことが明らかになった。さらに、遣明使節の貿易活動(主に牙行との取引)及び他国使節の貿易活動を比較史的観点から分析し、〓売・〓買の実態が浮き彫りになった。同時に、遣明使節の社会経済的基盤を明らかにするために、日本側史料の記事も収集・分析した。その結果、「日明外交文化」の日本国内における一側面、とりわけ外交文書の作成過程及び役者の選任過程、貿易利潤を期待していた様々な勢力の関与が明らかになった。 (2)(イ)大分県、(ロ)中国(江蘇省)、(ハ)長崎で現地調査を行った。(イ)は羅漢寺を踏査し、耶馬渓風物館で「十八羅漢図」展を見た。その図は、明代の作品であり、十六世紀ごろ中国から博多へ伝来され、羅漢寺が所蔵することとなった、明朝との文物交流の証しである。また、遣明船の港としても重要であった門司港を踏査した。(ロ)は、入明記の記述をもとに、遣明使節が鎮江・呉江でおとずれた場所及び遣明使節が利用した運河を踏査した。(ハ)は、長崎をおとずれ、遣明使節の渡航の際、重要な停泊地であった五島列島も踏査した。 以上の調査は、遣明使節の活動を、文献史料だけでは分からない視角から想像・理解するのに貢献するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料収集や関連記事の入力作業及び史料分析は、当初の研究計画の通り進んだ。史料分析による研究成果は、国内・国際学会やワークショップで発表した。前近代東アジア史及び遣明使節に対する理解を深めるために、海外のいくつかの大学で講演を行い、ネットワーク作りにつとめた。予定していた現地調査も行うことができた。史料からのデータをもとに、外交文書データベースの作成も予定されていたが、その完成は平成24年度の課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、引き続き関連史料を収集する必要もあるが、主な作業としては、これまで収集した史料の関連記事を入力し、その分析を行う予定である。新たなデータを参考にして外交文書データベースを作成することも今後の課題の一つである。また、史料分析の成果をもとに、現在いくつかの論文を執筆中であるが、これらの論文も24年度に完成させる予定である。また、23年度同様、日本と中国での現地調査も行いたい。
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