2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11F01019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧島 一夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GU Liyi 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 銀河団 / 宇宙高温プラズマ / 宇宙X線 / 暗黒物質 / 銀河進化 |
Research Abstract |
Gu博士の研究課題は、近傍から遠方にかけての銀河団のX線画像と可視光画像を系統的に解析することを通じ、「銀河団中のメンバー銀河はプラズマとの相互作用により、宇宙年齢かけて重力ポテンシャルの中心に向け落下するはず」という、牧島が2001年に提唱した独創的な予言を、観測的に実証することである。 我々は今年度、スローンデジタルスカイサーベイやハワイ大学88インチ望遠鏡で撮影された、約30個の銀河団の可視光画像を詳しく解析し、銀河団の中心から周辺にかけて、銀河の質量分布がどう減少して行くかを導いた。同時に我々はチャンドラ衛星などで得られた、それら銀河団のX線公開データを解析し、個々の銀河団における高温プラズマの質量分布を推定した。得られた可視光とX線の結果を比較したところ、遠方の(より若い時代の姿を見せる)銀河団ほど、プラズマの周辺まで銀河が広く分布しており、逆に近傍の(より進化した段階の姿を見せる)銀河団では、プラズマの中心部に銀河が密集するという結果が得られた。これは我々が探していた効果そのものであり、考えうる様々な誤差やバイアスを考慮しても、銀河が宇宙年齢かけて銀河団の中心部めがけて落下してきたことが、ほぼ確実となった。 Gu博士は牧島と協力し、この結果を、2011年7月に米国スタンフォード大学で開催された第4回「すざく」衛星国際シンポジウム、日本天文学会の秋と春の年会などで発表した。またGu博士は、東京大学理学系研究科の3カ所(天文学専攻、ビッグバン宇宙国際研究センター、天文学教育研究センター)、国立天文台、JAXA宇宙科学研究所など、多くの機関のセミナーで講演し、我々の成果の宣伝を図るとともに、さまざまな立場からの批判を仰いだ。そのお蔭で、我々の成果は次第に広く受け入れられつつあり、銀河と銀河団の宇宙進化に関し、斬新な可能性が拓けつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Gu博士は2011年5月の来日以来、非常に精力的に可視光とX線のデータ解析を推進し、当初の見通しより格段に早くわずか半年ほどで、9.「研究実績の概要」に述べたように、目的とする研究成果を導くことに成功した。さらに国内での学会講演やセミナーを通じ、国内の天文学、宇宙物理学、プラズマ物理学の研究者に成果を伝え、彼らの意見を取り込み、我々の結果を強化してきた。こうした素晴しい進展は、Gu博士の研究者としての的確な判断、優れた宇宙物理学の知識、卓抜なデータ解析の腕前などに依るところが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度には以下の6つの目標を掲げる。(1)可視光やX線のデータを増やすと同時に、解析方法を自己点検し結論の信頼性を高める。(2)銀河団の全重力質量分布を導出し、暗黒物質の分布に対する銀河分布の進化を明らかにする。(3)銀河落下の原因がプラズマとの相互作用にあることを強化する。(4)この画期的な成果を公表すべく、投稿論文を執筆し出版する。(5)多くの国際学会にて成果を発表し、我々の成果を国際的に知らしめるとともに、批判を仰ぎ、もって我々の学説をより堅固なものにする。(4)この新しい視点の波及効果を高めるため、国内外を問わず、柔軟で発展的な共同研究を展開する。
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Research Products
(4 results)