2011 Fiscal Year Annual Research Report
衝突エネルギー可変交差分子線による多次元化学反応ダイナミクスの可視化
Project/Area Number |
11F01029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 俊法 京都大学, 理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHEN Huan 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 交差分子線 / 化学反応 / 散乱 / 微分断面積 / 衝突エネルギー |
Research Abstract |
放射線化学、放射線生物学、放射線医学の初期過程は、高エネルギー粒子による細胞内の水の光イオン化である。イオン化によって電子が放出され、水の伝導帯を経由して水中を走り、やがてエネルギーを失って水中にトラップされる。電子を水のOH結合が取り囲むようにして安定化した集合体を水和電子と呼ぶ。イオン化された水分子はイオンになり、やがてOHラジカルを生成する。放射線によるDNAの損傷はこのOHラジカルが核酸の二重螺旋を破壊するためと考えられているが、高エネルギー電子の核酸に対する解離性付着の寄与も無視できない。本研究では超高速光電子分光を液体ビームに適用し、電子の放出や失活を直接観測し、これら放射線化学の初期過程を明らかにすることを目的とした。100kHzの繰り返し周波数を持つTi:Sapphireレーザーの出力(800nm,100fs)を励起源として、非直線型光パラメトリック素子を自作し、深紫外光の極短パルスを発生する光源を製作した。波長は260nmと225nmである。パルスの交差相関時間は60fsであった。水和電子の電子束縛エネルギーを測定するために、Nalの水溶液(0.1M)中のI-イオンに225nmの光パルスを照射して電子を放出させ、水中に安定化させた。このCTTS(charge transfer to solvent)反応は数百ピコ秒(1ピコ秒は10-12秒)で終了し、水和電子と中性のヨウ素原子が生成する。そこで、225nmの光パルスを照射してから、2ns後に260mmの光パルスを熊射して、水和電子を水溶液から放出させ、液面から真空に飛び出した電子の運動エネルギーを測定した。エネルギーは3.4eVと求められた。同様に、メタノールやエタノール中での溶媒和電子の電子束縛エネルギーも測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
100kHzの高繰り返しレーザーを励起源として、非直線型光パラメトリック素子を構築し、従来にない紫外域の極短パルス光源を開発して論文発表した他、これを用いて水和電子や溶媒和電子の電子束縛エネルギーの測定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
なし
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Research Products
(3 results)