2012 Fiscal Year Annual Research Report
「占領空間」の移動を問う―<フィリピン・ウチナーンチュ>の事例
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11F01314
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊藤 るり 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZULUETA Johanna 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 沖縄 / 占領 / 移動 / フィリピン・ウチナーンチュ / 帰還移民 / 故郷 / 米軍基地 / 沖縄女性 |
Research Abstract |
本研究は、米軍駐留という「占領空間」とのかかわりで、沖縄-フィリピン間移動を「フィリピン・ウチナーンチュ」に注目しながら解明することにある。さらに、本研究は沖縄-フィリピン間の人の移動を探求することを通じて、現代の移動・移民研究(国際社会学)に貢献するものである。本研究の対象は、フィリピン人と結婚した沖縄女性帰還者(一世と呼ぶ)と彼女らの子(二世と呼ぶ)である。 本研究の目的を達成するために、2012年度は、9月12日から12月11日にかけて、沖縄での調査・参与観察等を行い、また2013年3月13日から27日にかけて、フォロー・アップ調査を行った。上記の3ヶ月のフィールド・ワークの間にも、研究成果を学会などで報告した。主な成果・議論は以下である。 1.沖縄に居住するフィリピン・ウチナーンチュ二世は、「日本人」として生きているが、「ハーフ」という名づけを使用し、その名づけがエンパワーメントとして機能していることが観察された。それに関連し、これらの二世は米軍基地で働いているため、その経験が文化資本となり、沖縄での生活に強く影響している。そして、二世にとって子育ては、二世・三世のアイデンティティ形成との影響だけではなく、フィリピン・沖縄間移動の特定の構造的要因との関係を明らかにする必要があることを確認した。 2.沖縄女性の帰還者にとって、「死」に関することは重要であり、移動の経験・宗教・文化・家族関係・「故郷」への意識と結びついていると思われる。この観点からみると、帰還者の「home(故郷)」をどのように語るのかを深く理解できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開始から1年5ヶ月が経ち、本研究は順調に進展している。2012年度に本研究成果を学会等に報告し、学術雑誌等に投稿する準備も進んでいる。本研究の目的を達成するために、研究分担者のズルエタは沖縄で3ヶ月間の滞在をし、調査と資料収集を行った。その間にも、ズルエタは研究成果を様々な学会で報告することになった。現在、調査の結果などをまとめ、分析している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行った調査などは、本研究の目的を達成するようになり、これからは研究の理論的な部分を探求し、以前打ち出された理論を改善する。必要な場合、研究分担者のズルエタは再び沖縄とフィリピンへ行き、短期間のフォロー・アップ調査という形を行う。研究成果を様々な学会等で報告し、学術雑誌等で投稿する。
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