2011 Fiscal Year Annual Research Report
スピンクロスオーバーを示すナノ磁性体のミクロ多自由度ハミルトニアンに基づく理解
Project/Area Number |
11F01326
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BAKER MICHAELLLOYD 東北大学, 金属材料研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | スピンクロスオーバー / XMCD / 中性子 / 強磁場 / 1次元錯体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、超強磁場X線MCD分光及び強磁場中性子回折による分子磁性体のスピンクロスオーバー転移の研究を行うことである。23年度は、筑波大学大塩グループから提供を受けたFe-Col次元錯体に関してXMCD実験を実施した。この物質は、室温付近で温度誘起型のスピンクロスオーバー転移、低温で光誘起型の転移を起こす。従来のXMCDでは磁場が低く、磁化の小さな常磁性体の研究には困難があったが、今回、パルス磁場を用いた30テスラまでのXMCDを利用して、常磁性体への応用を可能にした。また、瞬間的に計測が出来るパルス磁場を利用することで、X線による照射ダメージの問題を回避できる事を実証するなど、技術的にも顕著な進展があった。 XMCD実験では、FeとCoの吸収端において、価数とスピン状態による特徴的な信号を得ることに成功した。その結果によれば、光励起下の低温でFe3価の低スピン状態に特徴的な信号が得られており、スピンの状態をミクロに特定することに成功した。しかしながら、励起効率が低い点から、試料表面の状態などに関する検討を要することも示唆されており、SQUIDやESR等の手段による相補的な研究を行っている。 さらに、Fe-Coの1:2型のスピンクロスオーバー物質、ラジカルとCoの電荷移動錯体などの新物質の評価も、ESRや磁化測定などの手法で進めており、これらの物質においてもXMCD実験のための基礎的な評価に関して進展が得られた。その中で、3つの代表的な波長帯のレーザーを使い分けて効率的な電荷移動励起を可能にする装置系を立ち上げる事に成功した。一方で、中性子回折に関しては、施設の稼働が遅れている中で、置換試料の作製や評価などの実験準備を推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で提案したXMCDによる磁化のミクロな評価に関しては、これまで課題であった試料損傷を回避する手法が新たに確立するなど大きな進展があった。一方で、中性子回折に関しては、震災により国内の施設の稼働がなされないあるいは遅延するなどにより実施が影響を受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
X線実験に関しては、既に24年度にも課題が採択されており問題はない。中性子実験に関しては、国内に加えて、国内施設の稼働が出来なかった場合に備えて、国外施設への申請も行い、マシンタイムの確保の対策を取っている。
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