2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11F01335
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 雅由 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHABBIR Muhammad 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 開殻系 / ジラジカル / 非線形光学 / 超分極率 / 密度汎関数法 / アセン / シクロアセン / フェニレン |
Research Abstract |
本年度は、開殻性を持つ[N]アセンおよび閉殻分子系である[N]フェニレン(N=5-10:ベンゼン環数)のトポロジーと開殻性および三次非線形光学(NLO)物性の間の相関について、長距離補正スピン非制限DFT(LC-UDFT)法を用いて計算と解析を行った。アセンではNの増大に伴い、開殻性の指標であるジラジカル因子(y)が増大しN=10ではほぼ完全開殻となるが、フェニレンでは考慮したNの範囲内では閉殻構造を保つ。我々の提唱する「中間の開殻性を持つ系では閉殻および完全開殻系に比べて第二超分極率(γ:三次NLO物性の指標)が増大する」という構造-特性相関と対応し、中間のyを持つ[5]アセンではほぼ同サイズの[5]フェニレンに比べてγ値が約9倍に増大する。さらにトポロジーの効果を検討するため、管状構造を持つシクロアセンおよびシクロフェニレンについても比較検討を行った。その結果、シクロフェニレンは検討したすべてのNで閉殻構造であるのに対し、シクロアセンでは特異なマルチラジカル性(y_0,y_1)を持つことが分かった。すなわちNが奇数のときはy_0とy_1が同じ値でかつ中間開殻性を持つが、偶数のときはy_0は常にほぼ1に近いがy_1は小さな値となった。これはNが奇数の場合にはHOMO-1とHOMOが縮重し、よく似た分布を持つが、Nが偶数では異なる軌道エネルギーと分布を持つという電子構造に起因する。この開殻性の変化に伴い、シクロフェニレンでは、Nの増大に従い単調増加するが、シクロアセンの場合はNが奇数と偶数の場合でY値が振動し、かつ同じNを持つシクロフェニレンより大きなγ値を与える結果となった。このように開殻系ではトポロジーが電子構造と三次NLO物性への特徴的な効果をもたらすことが明らかになった。このような構造-特性相関は新たな開殻NLO分子の設計指針の提案につながると期待される。以上の結果は第9回京都大学福井謙一記念研究センターシンポジウムにおいて発表し、International Journal of Quantum Chemistryへ論文投稿し公表済みである。また、本年度はデカボラン-ハロゲン錯体の構造-二次NLO物性相関についても研究を行い、その成果についてもJournal of Physical Chemistry Aへ論文投稿し公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェン系での構造と開殻性の依存性およびそれに伴う三次非線形光学物性の変化について明らかになり、国際会議や学術誌での成果発表も行えたので、当初の予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、非対称開殻系の例として、1次元、2次元構造をもつグラフェンナノフレークのNLO特性に関して電場印加効果やドナー/アクセプター置換基の導入効果を検討する。特に、置換基のドナー/アクセプター性の強度や導入する置換基の数に対する依存性だけでなく、導入位置による変化も検討する。
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