2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11F01335
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 雅由 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHABBIR Muhammad 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 開殻系 / ジラジカル / 非線形光学 / 超分極率 / 密度汎関数法 / フラーレン / 対称性 / デカボラン |
Research Abstract |
本年度は、フラーレン系のNLO特性を開殻性の観点から検討し、新規な構造-特性相関を見出した。特によく知られたフラーレンであるC_<20>,C_<26>,C_<30>,C_<36>,C_<40>,C_<42>,C_<48>C_<60>,C_<70>を対象に、ジラジカル因子y_i(開殻性の理論的な指標、0[閉殻]≦y_i≦1[完全開殻])と第二超分極率γ(分子レベルでの三次NLO特性)の相関関係について、スピン非制限密度汎関数(DFT)法を用いて検討した(計算レベル:LC-UBLYP(μ=0.33)16-31G^*//UB3LYP/6-31G^*)。その結果、フラーレンの幾何構造(対称性やトポロジー)により、系のジラジカル因子y_iが大きく異なるという結果が得られた。さらに、分子長軸方向成分の第二超分極率γ(=γ_<zzzz>)は中間開殻系のフラーレン(C_<30>,C_<40>)において著しく増大することが明らかになった。この中間開殻系におけるγ値の著しい増大は、以前の我々のVCI理論に基づく解析結果とも一致し、フラーレン系においてもジラジカル性に基づくNLO分子の設計指針が有効であることが示された。以上の結果は化学分野のトップレベル総合学術誌であるChem.Eur.Jに投稿し掲載された。また、神戸で開催された理論計算科学の国際会議であるConference of Computational Physics(CCP)で成果発表し、best poster awardに選出された。さらに、量子化学の国際会議である53^<rd> Sanibel symposiumでも成果発表し、IBM-Lowdin Awards fo Postdoctoral Associatesを授与された。 また、炭素以外の元素を含む有機一無機ハイブリッド系についても対象とし、ホウ素原子からなる籠型形状をもったデカボラン(B_<10>H_<14>)とその誘導体(閉殻系)の三次NLO応答について、DFT計算に基づく理論解析を行った。これらの結果は現在専門学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで数多くの研究がなされているフラーレン種について開殻性に基づく電子状態の理解とそれに基づく光学特性の全く新しい構造一特性相関を得たこと。
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Strategy for Future Research Activity |
開殻系および電荷移動系のNLO物性制御についての分子設計の研究結果をもとに、今後は静電場印加のような外部刺激に対して応答し、可逆的にNLO特性の大小やスピン状態をスイッチング可能な複合機能スイッチング分子の設計に取り組む。この目的のため、テトラチアフルバレン(TTF)が結合したドナー一アクセプター型ラジカル分子をモデルとして、外部刺激に対する応答特性を理論計算により検討する。その結果に基づいて、外部刺激に鋭敏に応答し、そのNLOを始めとする電子・磁気・光物性を劇的に変化させる開殻分子系に基づく複合機能スイッチング分子の創製を目指す。
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