2011 Fiscal Year Annual Research Report
三重結合ケイ素化合物ジシリンが拓く新しい典型元素化学 : 高周期ビニルカチオンの合成
Project/Area Number |
11F01338
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関口 章 筑波大学, 数理物質系, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ASAY MatthewJosef 筑波大学, 数理物質系, 外国人特別研究員
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Keywords | カチオン / 元素化学 / ジシレニルカチオン / 有機化学 / 有機ケイ素化学 / メチル化反応 / N-ヘテロ環状カルベン / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究では、三重結合ケイ素化合物ジシリンを鍵化合物としたビニルカチオンの炭素骨格をケイ素に置き換えた高周期ビニルカチオンの革新的合成法を開拓し、新規ケイ素カチオンの合成及び性質の解明を行うことを目的として研究を行った。この化学種は「ケイ素を含む多重結合」であり、かつ「ケイ素カチオン」という二つの高反応性要素をもつためこれまでに観測すらされていない全く未知の化学種である。一方、N-ヘテロ環状カルベンは、強いルイス塩基性を有し、遷移金属に強く配位する。この性質を利用した多様な金属触媒が開発されている。最近、申請者らのグループではN-ヘテロ環状カルベンと三重結合ケイ素化合物との反応により、カルベン-ジシリン錯体の合成に成功した。さらに塩化亜鉛との反応でカルベン-ジシリン亜鉛錯体が生成することを見出した。そこで、ジシリン-カルベン錯体を鍵化合物とし、メチルトルフラートを用いたメチル化反応を検討した。その結果、ビニルカチオン型ケイ素カチオン種を黄色結晶として安定に合成・単離するができた。また、その分子構造をX線結晶構造解析によって決定し、カチオン部分と対イオンとの相互作用の無いN-ヘテロ環状カルベンによって安定化したジシレニルカチオンであることを明らかにした。今後、構造、結合、物性等を実験と理論の両面から包括的に解明し、構造や電荷分布のデータから、このジシレニルカチオンのπ結合性及びルイス酸性について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はジシリンとN-ヘテロ環状カルベンとの反応でジシリン/NHC錯体を合成し、そのメチル化反応を重点的に検討した。その結果、期待したビニルカチオン型ケイ素カチオン種を黄色結晶として安定に合成・単離することに成功し、その研究成果をアメリカ化学会誌J. Am. Chem. Soc.に速報として掲載されたことから本年度の研究は順調に進展しているといえる。また、学会での発表も2回行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ本研究課題は順調に進展しており、研究計画の大幅な変更等は必要ないと考えられる。今後は構造、結合、物性等を実験と理論の両面から包括的に解明し、構造や電荷分布のデータから、このジシレニルカチオンのπ結合性及びルイス酸性について明らかにしていく。また、溶液中での構造もNMRスペクトルや電子スペクトルの解析からその分子構造を明らかにする予定である。
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