2012 Fiscal Year Annual Research Report
三重結合ケイ素化学種ジシリンが拓く新しい典型元素化学:高周期ビニルカチオンの合成
Project/Area Number |
11F01338
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関口 章 筑波大学, 数理物質系, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ASAY MatthewJosef 筑波大学, 数理物質系, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2011 – 2013-03-31
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Keywords | カチオン / 元素化学 / ジシレニルカチオン / 有機化学 / 有機ケイ素化学 / N-ヘテロ環状カルベン / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
ジシレニルカチオンはビニルカチオンのケイ素類縁体であり、反応活性なケイ素=ケイ素二重結合部位とケイ素カチオン部位の2つの反応活性点をもつことから有機ケイ素化学の研究において重要な化学種であり、その物性、電子状態、反応性等に非常に興味が持たれている。ジシレニルカチオン合成へのアプローチとして、配位安定化されたジシレニルカチオンの合成を検討し、ジシリン-NHC錯体に対してメチルトリフラートを反応させることによって、ビニルカチオン型ケイ素カチオン種を室温で安定な結晶として合成・単離することに成功した。分子構造はX線結晶構造解析によって決定し、カチオン部分と対イオンのトリフラートとの間に結合性の相互作用のないジシレニルカチオン-NHC錯体であることを明らかにした。ビニルカチオンのケイ素類縁体であるジシレニルカチオンは、ケイ素共役系分子構築のための反応剤としてだけでなく、その構造自体も興味深い化学種であり、この化合物が初めて合成・構造解析に成功した研究例である。最終的な研究目標は、カチオン部とアニオン部が完全に分離した結合性相互作用のないカチオン種の合成である。N-ヘテロ環状カルベンによって安定化されたジシレニルカチオンからNHCを取り除くことができれば、相互作用のないカチオン種の合成が達成できる可能性があり、種々のルイス酸やホウ素化合物などを用いて脱NHC反応に関する条件検討を行った。ここまでの研究により、NHCのドナー性が強いためカチオン種を効果的に安定化する一方、最後の反応で取り除くことが困難であることがわかった。
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