2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子井戸・フォトニック結晶を用いた高効率熱光発電デバイスに関する研究
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11F01365
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野田 進 京都大学, 工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OSKOOI Ardavan 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | フォトニック結晶 / 太陽電池 / 量子井戸 / 熱光発電 / 大面積共振 |
Research Abstract |
本研究では、幅広いスペクトルをもつ太陽光を、エネルギー損失なく狭帯域の熱輻射スペクトルへと変換する熱輻射制御の実現を、量子井戸による電子系の制御と、フォトニック結晶を用いた光子系の制御により実現するということを目指して研究を開始した。その後、研究を進める過程で、新たにフォトニック結晶のバンド構造の特異点(バンド端)における大面積共振作用を用いて、Si系太陽電池への光吸収率を増大させ、太陽光発電の効率を向上させることを目指すという研究も新たに開始し、この両者に関する検討を進めている。 熱輻射制御に関しては、GaAs/AlGaAs量子井戸によるサブバンド間遷移による電子系制御と、フォトニック結晶を用いた光子系の状態制御を組み合わせることをで、特定の波長域のみで相互作用が生じるようにし、エネルギー損失なく狭帯域の熱輻射スペクトルを得ることを提案検討し、理論解析によりこのような手法により狭帯域スペクトルが得られることを示した。また、本研究室の研究員と共同で試料の作製・評価を行い、投入した電力が、この狭い熱輻射スペクトルに集約可能であるということを示すことに成功した。 大面積共振作用を用いた太陽電池に関しては、フォトニック結晶構造の格子点の配置が、ランダムにずれる場合にどのような影響があるのかについて、FDTD法による電磁界解析により詳細な解析を進めた。その結果、比較的小さな(格子定数の0.05~0.1倍程度)格子点配置のランダムな位置ずれが生じた場合に、光吸収スペクトルの線幅が広がるため、位置ずれのない構造と比較して光吸収が逆に増大するという、非常に興味深い結果が得られた。この結果は、太陽光発電素子を作製する際、作製精度の許容誤差が大きいことを意味し、高効率化のためには意図的にランダムな位置ずれを導入すればよいことを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の、多重量子井戸・フォトニック結晶の組み合わせ構造に関する理論検討に加えて、新たにフォトニック結晶の大面積共振作用を用いた太陽電池の光吸収増大に関しても開始しており、前述のように光電変換効率向上に向けて順調に結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、熱輻射スペクトルの狭帯域化の研究に関しては、これまでに得られている、黒体の1/30まで狭くなった熱輻射スペクトルをさらに狭めるための構造設計を進める。また、バンド端における大面積共振作用を用いた光トラップと太陽光発電の高効率化に関しては、光吸収スペクトルの多波長化を実現するためのトポロジー最適化を進めるとともに、光吸収の増加の実験的な検証も進める。
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