2011 Fiscal Year Annual Research Report
水同位体領域気候モデルによるチベット高原での水蒸気起源・標高・気候の関連性の解明
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11F01369
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芳村 圭 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LIU Zhongfang 東京大学, 大気海洋研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 降水同位体比 / PNAパターン / 気候変動 / 大循環モデル / 水蒸気輸送過程 / 気候復元 / ブロッキング |
Research Abstract |
Zhongfang Liu特別研究員の10月31日の来日から5か月間の短期間であったが、極めて高い生産性で研究を、進めることができた。下記にその概要を記す。 1.太平洋・北アメリカテレコネクション(PNAパターン)と降水同位体比の地域分布及び年々変動との関係性に着目し、そのメカニズムを解明した。1990年と1992年というPNAパターンが顕著に異なる年では、極域ジェット気流の蛇行がトリガーとなって水蒸気移流の方向が大陸西側でも東側でも大きく変化することにより、降水同位体比分布に顕著な差が生じることを明らかにした。この結果は、Climate Dynamicsに投稿した。 2.1.の結果を拡張する形で、同位体大循環モデルによる結果を用いてPNAパターンによる違いの普遍性を確認した。同位体大循環モデルが現実の分布とPNAパターンによる違いをよく再現できていることを確認した上で、1979年から現在までの約30年間においてPNA指標による分別を行い、正のPNAと負のPNAでの気候値コンポジットを作成した。その上で、1.の研究で限定的に言及していた水蒸気輸送過程について、正のPNA期には、大陸北西域では南西方向からの水蒸気輸送が卓越し、大陸南東域では、北西からの極域循環の一部の輸送が卓越していることが分かった。また、大陸を東側と西側に分割して分析したところ、西側の降水同位体比の分布にPNAに起因する有意な差が認められた。この結果は、次年度内に、Geophysical Research Lettersに投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
11月からの短期間であるにもかかわらず、すでに1篇の論文を投稿し、別の論文も準備中である。研究手法においても、モデリングという新たな技術を得て、意欲的に新たな研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、同位体大循環モデルをさらに頻繁に用いて、北米及びチベット高原での降水同位体比の決定メカニズムについて追及していく。必要であれば、詳細を扱える同位体領域気候モデル等も利用していく。並行してチベットにおける観測データの収集も行う。
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