2012 Fiscal Year Annual Research Report
水同位体領域気候モデルによるチベット高原での水蒸気起源・標高・気候の関連性の解明
Project/Area Number |
11F01369
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芳村 圭 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LIU Zhongfang 東京大学, 大気海洋研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 水安定同位体比 / 降水量分布 / PNAパターン / 大気大循環 / 気候モデル / 古気候 |
Research Abstract |
平成24年度は、北アメリカと東アジアにおける大気中の大規模循環場と同位体比シグナルとの関係性を調べるため、観測データとモデルシミュレーションを組み合わせた解析に特に注力し、年間を通して着実な成果を得ることができた。下記にその概要を記す。 1.太平洋・北アメリカテレコネクション(PNAパターン)と降水同位体比の地域分布及び年々変動との関係性に着目し、そのメカニズムを解明した。1990年と1992年というPNAパターンが顕著に異なる年では、極域ジェット気流の蛇行がトリガーとなって水蒸気移流の方向が大陸西側でも東側でも大きく変化することにより、降水同位体比分布に顕著な差が生じることを明らかにした。この結果は、CIimate Dynamics誌に掲載された。 2.1.の結果を拡張する形で、同位体大循環モデルによる結果を用いてPNAパターンによる違いの普遍性を確認した。同位体大循環モデルが現実の分布とPNAパターンによる違いをよく再現できていることを確認した上で、1979年から現在までの約30年間においてPNA指標による分別を行い、正のPNAと負のPNAでの気候値コンポジットを作成した。その上で、1.の研究で限定的に言及していた水蒸気輸送過程について、正のPNA期には、大陸北西域では南西方向からの水蒸気輸送が卓越し、大陸南東域では、北西からの極域循環の一部の輸送が卓越していることが分かった。また、大陸を東側と西側に分割して分析したところ、西側の降水同位体比の分布にPNAに起因する有意な差が認められた。この結果は、Earthand Planetary Science Letters誌に投稿し、現在修正中である。 3.人工衛星に搭載された分光分析計データ(SCIAMACHYデータ)を用い、東アジアにおける水蒸気同位体比変動に対する、局所的・大局的要因を検討した。この結果は、Science China:Earth Sciences誌に投稿し、現在修正中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に投稿した論文は採択され、現在も2編の論文が投稿中となっている。モデルシミュレーションについても順調に利用が進んでおり、計画通りと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の進展を踏まえ、以下の3点について研究を進めていく。 1.これまでの研究で明らかとなった、PNAパターンの復元に利用できる北米の東西二極の石筍から得られた酸素同位体比データを用い、数千年規模の気候変動の復元を試みる。 2.水蒸気同位体比と降水同位体比を用い、東アジアにおいてモンスーン気候の北限について再定義する。 3.観測データとモデルシミュレーションを組み合わせ、東アジアにおけるモンスーンとENSOとの関係性についてさらに詳しく検討する。
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