2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11F01379
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 秀紀 九州大学, 総合理工学研究院, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DEY Indranuj 九州大学, 総合理工学研究院, 外国人特別研究員
|
Keywords | イオンエンジン / 中和器 / マイクロ波 / 電子源 |
Research Abstract |
当研究室においては、従来から、小型イオンエンジンを開発して来た。この小型イオンエンジンでは、マイクロ波による電子サイクロトロン共鳴(ECR)加熱によりプラズマを無電極で生成出来る。このため、エンジンの長寿命化が期待でき、小型衛星の軌道修正、或は、「はやぶさ」に代表される惑星探査に応用可能である。エンジン本体としては、世界最高の性能を誇るものの、エンジンと一体となって運転される中和器(電子源)の開発は遅れ、いまだその性能は十分なものではない。(必要とされる電流、12mAに対して、現在まで種々のアイデアを試して来たが、6血を達成しているに過ぎない。)今後、このタイプのイオンエンジンの実用化・商用化のためには、何としても中和器の性能を向上させる必要がある。 今回の研究員候補者は、マイクロ波放電に関する知見を豊富に持っているので、彼と共同研究することにより、中和器の性能向上が大いに期待できる。具体的には、磁場配位を従来の軸方向ミラー磁場から、径方向カスプ磁場配位に変更することで、電子の壁への損失を軽減させ、引き出し電流量を増大させることが可能であると考えられる。 更に、このカスプ磁場配位をイオンエンジン本体の方にも適用すると、更にイオンエンジン本体の方も性能が向上することが期待される。例えば、この配位では、生成されるイオンは、速度の半径方向成分が小さいので、引き出しグリッドの損傷が押さえられ、グリッドの長寿命化が期待される。 マイクロ波は、アンテナを通して供給されている。この体系は、波とプラズマの相互作用という物理的にも興味深い現象を利用する。このため、本研究は、イオンエンジンの実用化だけでなく、プラズマの基礎学理の発展にも貢献すると考えられ、普遍性を持っている。 以上、要するに、共同研究により、小型イオンエンジンシステム、特に中和器の性能向上が計られ(引き出し電流を増大させ)、実用化・商用化で世界を更にリードすることが期待出来る。また、成果を共有することにより、インドでのイオンエンジンの開発にも貢献する。 本年度は、日本に来てから2年目になり、日本の生活にも慣れて、研究も順調に進展している。中和器に関しては、精力的に実験を行い、ほぼ最適の配位を見いだしている。もう一息で、目標値を達成するところまで来ている。一方、イオンエンジンに関しては、設計を行い、部品発注し、組み立て、準備実験を行い、プラズマの点火に成功した。今後は本格的なイオンエンジンの実験の予定である。この成果をもとに再度、中和器の設計に反映させることになる。シミュレーションコードの開発も着実に続けており、興味深い成果を得ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラズマは成功裏に生成され、低電力、低流量で電子電流が引き出されるようになった。形状の最適配位を見いだし、推進材流量0.1sccm、入力3Wで、引き出し電流14mAが得られている。これは、目標値、推進材流量0.05sccm、入力2Wで、引き出し電流12mAには、到達していないが、これまでの結果は、おおむね満足すべきものであり、最適化をさらに進めれば、目標値達成も時間の問題であろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
今までに得られて知識をもとに、今度はイオンエンジン設計に取りかかっており、装置を完成しており、次年度に実験を行う予定である。現在は、プラズマ点火には成功している。今後は、グリッドを据え付け、1.5KVの電位でイオンを引き出す予定である。これにより、イオンエンジン-中和器が揃った、小型電気推進システムの完成となる。
|