2011 Fiscal Year Annual Research Report
自然及び人工光合成中心における電荷及びエネルギー輸送のモデル化
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11F01502
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
NORI FRANCO 独立行政法人理化学研究所, デジタル・マテリアル研究チーム, チームリーダー
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GHOSH PULAKKUMAR 独立行政法人理化学研究所, デジタル・マテリアル研究チーム, 外国人特別研究員
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Keywords | 光合成 / 集光性複合体 / 励起子移動力学 / 電荷移動力学 / 量子コヒーレンス / フェルスターエネルギー移動速度 / 相関ゆらぎ / 非マルコフ力学 |
Research Abstract |
2011年度に、我々は反応中心周辺の光アンテナ発色団の位相的アレンジメントの効果を主要研究課題に取り上げた。主たる目的は、反応中心周辺の光アンテナ複合体の最も効率的なアレンジメントを見出すことであった。具体的には、3つの必須構成要素であるドナー、感光性ユニット、およびアクセプタを持つ分子トライアドから成る光化学系を考察した。この場合も、中央部の感光性コンポーネントは4個の補助的集光アンテナ色素と結合しており、結合した光アンテナ反応複合体は2個の電極間に挿入されている。 フェルスターメカニズムによって説明される光アンテナから人工的反応中心である分子トライアドへの共鳴エネルギー転送について考察を行なった。また、電子(量子系)とフォノンモードにある熱浴(外界)との間の強いカップリングに関しても調査した。原理的には、反応中心の周りにある光アンテナ複合体の可能な位相的配置を多数考えることができる。しかし、この分析を簡略化するため、2つの極端なケース、つまりいくぶん逆の位相あるいはネットワークを持つケースに焦点を合わせた。この2つのケースとは、上手く接続した反応中心のケース、そして中央の反応中心が、ここでは直線鎖の一部である唯一の光アンテナのみと結合しているという前者とは反対のケースである。最初のアレンジメントでは、周囲にあるすべての色素から反応中心までの直接的な励起転送が可能となる。2番目の配位では、エネルギーは集光性発色団連鎖に沿ったカスケード機構により伝達され、ここでは1つの発色団のみが反応中心に接続されている。我々は、カスケード的エネルギー伝達を利用する人工的光合成系はより広い波長範囲にある光子を吸収し、かつ、すべての光アンテナ発色団と反応中心の直接的カップリングに基づいたシステムよりも高能率でそれらのエネルギーを電気に変換できることを示したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年9月から現在の過去6カ月間、我々は提案してあった研究計画の一部を首尾よく実行してきた。すなわち、反応中心の周りの光アンテナ発色団の位相的なアレンジメントの効果を調査してきたのである。我々の研究では、接続性に加えてエネルギー障壁(ボトルネック)が、最大のエネルギー変換効率をもたらす位相的なアレンジメントを決定するにあたり重要な役割を果たしていることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
我々には、特に多重励起子力学を重視した光アンテナ複合体LH IとLH IIの双方におけるインター・リングとイントラ・リング励起子移動力学に関する研究計画があるが、今までのところ、この点についての取り組みはなされていない。主として、励起エネルギー移動効率が、複数の励起子、および波動性を示す側面であるコヒーレント動力学に及ぼす短時間内の衝撃からどのような影響を受けるかについて詳しく研究する意図である。また、単一の励起子および複数の励起子の力学の2つの場合における相関ゆらぎと非マルコフ力学の効果についても研究していく。
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Research Products
(1 results)