2012 Fiscal Year Annual Research Report
重粒子線誘発バイスタンダー効果における細胞間情報伝達機構の関与
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11F01513
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 雅雄 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AUTSAVAPROMPOM Narongchai 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 外国人特別研究員
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Keywords | バイスタンダー効果 / マイクロビーム / 重イオン / ギャップジャンクション / 細胞間情報伝達機構 / 細胞増殖死 / 遺伝子突然変異 / 微小核形成 |
Research Abstract |
一般的に放射線治療の対象となる腫瘍体積にはその近辺も含めて、がん細胞に加えて正常細胞も含まれている。炭素線治療の更なる高度化には、この様な異なる種類の細胞に対する放射線応答を明らかにすることが必要不可欠である。この問題を解決するために平成24年度は、放射線医学総合研究所重粒子がん治療装置より得られた炭素線を照射したヒト脳腫瘍由来がん細胞と非照射のヒト正常細胞を共培養して、ヒト正常細胞(バイスタンダー細胞)への生物効果を細胞致死効果・遺伝子突然変異誘発効果・微小核形成頻度を指標として調べた。照射直後の共培養から得られた結果は、炭素線非照射であるヒト正常細胞の致死効果と微小核形成頻度が有意に上昇し、その効果はギャップジャンクションを介した細胞間情報伝達機構阻害剤と活性酸素除去酵素の何れを添加しても消失した。以上の結果は、がん細胞と正常細胞の間に細胞間情報伝達機構を介したメカニズムもしくは細胞培養中に放出された活性酸素を介したメカニズムによって、バイスタンダー効果が誘導され、炭素線非照射の正常細胞にもがん細胞と同様の生物効果が誘導される事を示している。さらに、10週間に渡り共培養を継続し、その後の正常細胞に生じる遺伝子突然変異と微小核形成を調べたところ、何れの生物効果も有意に高くなり、ギャップジャンクション特異的阻害剤を併用した場合は、その効果が消失することが判った。この結果から、ギャップジャンクションを介して誘導されたバイスタンダー効果は、十数回分裂した後の細胞にも伝達されることが判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線医学総合研究所重粒子線がん治療装置における共同利用研究課題が採択され、年度内に十分な照射実験のマシンタイムが確保出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
所属研究機関および他研究機関における放射線照射実験は、一度の中止もなく5月中には当初予定した照射実験を完了する予定である。残りの期間を利用して、生物学的効果の判定ならびに得られた研究成果をまとめる。特に、海外の著名なシンポジウム・学会にて成果を実施することを推進し、広く全世界に情報を発信する事に務める。
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Research Products
(4 results)