2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11F01787
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高柳 匡 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PRUDENZIATI Andrea 京都大学, 基礎物理学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 位相的弦理論 / 超弦理論 |
Research Abstract |
外国人特別研究員のPrudenziatiは、位相的な弦理論の代数構造に関して興味深い性質を明らかにしたい。Wittenによって発見された位相的な再帰公式は有名で、良く知られているが、それが位相的な弦理論に関して何を意味するのかはよく理解されてこなかった。Prudenziatiは、この再帰関係式を、位相的な弦理論で重要な役割を果たすBershadsky-Cecotti-Ooguri-Vafaの正則アノマリー方程式を比較を行った。その結果、うまく対応する演算子を選んでやると、両者の等価性が成り立つことを具体的に確かめた。 研究代表者の高柳は、エンタングルメント・エントロピーと呼ばれる系の情報量を測る物理量が、系全体を励起する場合にどの程度増加するかをAdS/CFT対応を用いることで明らかにした。その結果、熱力学第一法則に類似した法則に従うことが分かり、物質の情報量が、その物質のエネルギーに比例していることが明らかになり、PhysicalReviewLetter誌に出版された。この研究では、時間と空間方向に並進対称性がある場合を仮定して答えを導いたが、そのような対称性がない場合にどのうような関係式が得られるかという疑問も生じる。そこで、高柳とPrudenziatiは共同研究を現在おこなっており、エンタングルメント・エントロピーを定義する際の部分系を特に球体に取る場合には、対称性がなくても第一法則に類似した法則が成り立つことを既に確認している。その後、高柳は、空間の一点が励起されるいわゆる局所クエンチの場合についてAdS/CFT対応を利用して、その重力的な記述法を発見して、エンタングルメント・エントロピーを計算した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、位相的弦理論の中でも特に開いた弦理論の性質を明らかにすることである。Prudenziatiの書いた論文で、前述のように位相的弦理論の代数構造に関する有用な結果が得られた。この結果は開いた弦の場合にも少し変形をすることで成り立つと期待されるので、研究課題に関する十分な研究成果があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究代表者とPrudenziatiは、量子エンタングルメントの観点で位相的な弦理論を解析したいと思っている。具体的には、位相的な弦理論において、空間を半分に分けた時のエンタングルメント・エントロピーを計算する、またそのエントロピーの満たす方程式と、位相的弦理論の運動方程式との関係を明らかにしたい。その最初のステップとして、AdS/CFTにおいて、エンタングルメント・エントロピーの満たす方程式とアインシュタイン方程式の関係を明らかにしたい。具体的には、グラハム・フェファーマンゲージでAdS空間の周りの微小摂動を考えて、時間発展を考えることで運動方程式に相当するものを導出したいと考えている。
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