2011 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理による機能性酸化物材料の原子構造および電子状態の理論計算
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11F01799
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
幾原 雄一 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LV Shuhui 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 外国人特別研究員
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Keywords | セラミックス / 微細構造 / 理論計算 / 電子状態 |
Research Abstract |
本研究は、次世代デバイスへの応用が期待される機能性酸化物セラミック材料に対して原子分解能・元素識別走査透過電子顕微鏡法を用いて局在原子構造(原子サイトや不純物種同定)を計測し、第一原理による原子構造モデル計算を組み合わせることによって材料物性と原子・電子構造との相関について学術的に理解することが最終目標である。本年度は、強磁性や強誘電性、高耐圧性、巨大磁気抵抗、超伝導性など優れた機能性を有しているマルチフェローイック酸化物、特にダブルペロブスカイト構造をもった酸化物(化学組成RE_2CoMnO_6(RE:希土類元素))に着目して、第一原理による緩和構造モデル計算や局在原子構造、応力印加による電子状態変化について理論計算を中心に研究を遂行してきた。まず、希土類元素であるランタンを添加したLa_2CoMnO_6酸化物について理論計算を行った。この材料はダブルペロブスカイト構造のBサイト原子であるCoとMnが規則配列しており、強誘電性で半金属的な特性を有しているが外部応力(引張や圧縮)を印加することで絶縁性に遷移することが明らかとなった。この金属-絶縁遷移は、外部応力により結晶内のCoO_6八面体構造が歪むことによりCo(3d)電子軌道が大きく分極することで発現することが明らかとなった。近年の酸化物電子材料は薄膜として利用される場合が多く、基板上に薄膜形成した際に膜面内方向に大きな応力・歪みが導入され、バルク材料とは異なる物性が発現することを示唆する結果となった。本研究成果は他の材料系についても適用される知見と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では実験と理論計算の両立が不可欠であり、本年度は短期であったが全体研究計画のうち理論計算手法をまず確立・習得したことが次年度の実験(原子構造計測や電子状態解析)との融合に向けて大きく前進したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で用いる理論計算は原子レベルであり、構造計測における分解能のハードルは極めて高い。そのため、事前に原子分解能の電子顕微鏡施設を有する外部機関との連携・共同研究を既に開始しており、次年度以降の円滑な研究遂行に向けて準備している。また、理論計算について更なるモデル原子数増大を考慮して、スーパーコンピューターの共同利用許可についても申請しており、研究環境は全般的に整備されつつある。
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Research Products
(2 results)