2013 Fiscal Year Annual Research Report
古花粉学による日本の中~後期中生代の古植生及び環境についての研究
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11F01814
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
西田 治文 中央大学, 理工学部・生命科学科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEGRAND Julien 中央大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 古植物学 / 古花粉学 / 古植生 / 古環境 / 初期被子植物 / 中生代 / ジュラ紀 / 白亜紀 |
Research Abstract |
今回の研究では、中生代後期の日本における植生と環境をより詳細に復元し、被子植物の出現時期を特定する目的で、同時期の堆積物を用いて、時空間をできるだけ網羅したパリノフロラ(胞子・花粉相)解析を行った。 福井県勝山市滝波川周辺に分布する内帯の手取層群最上部北谷層(上部バレミアン~下部アプチアン期)において採集資料の花粉分析を行い、初の詳細な報告が出来た(Legrand et al., 2013)。胞子・花粉群集とともに裸子植物のクチクラと材片、葉上寄生菌類、淡水性の緑藻類も産出し、大陸辺縁の、河川か湖沼のような堆積環境と湿潤気候を推定出来た。 以前、和歌山県湯浅・有田川地域の物部川層群の湯浅層と有田層(前期白亜紀オーテリビアン~下部バレミアン期)からパリノフロラを報告したので、本研究では有田層を平行不整合に覆う西広層(上部バレミアン~アプチアン期)を調査し、Retimonocolpites属の被子植物花粉を発見した(Legrand et al., 2014)。大型化石も含め日本最古の被子植物の確実な記録となり、日本における被子植物の出現時期は、これまで知られていたよりも約2500万年古いことが明らかになった。アジアでは最古の被子植物化石は中国東北部で報告され、前期白亜紀では花粉化石が中国、ロシアと韓国でしか報告されていない。今回の報告は、中国における被子植物の出現時期と矛盾せず、東アジアにおける被子植物出現時期を反映していると考えられる。 徳島県勝浦地域と熊本県から資料を得、アルビアン期の徳島県藤川層から被子植物花粉を数種類発見できた(2013年8月の日本花粉学会第54回大会にて発表)。西広層のRetimonocolpitesの報告と藤川層の花粉分析の結果をあわせると、物部川層群の分布域では被子植物は上部バレミアン期に出現し、アルビアン期にかけて多様化したと推定出来た。この結果は、日本における被子植物の多様化過程を初めて明らかにしただけでなく、東アジアにおける花粉生層序の確立にも大きく寄与した点で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
和歌山県・徳島県に分布する物部川層群の胞子・花粉群種から花粉生層序を確立し、日本における被子植物の出現時期と多様化を明らかにするという目標を、研究計画期間内に達成できた。 また、渦鞭毛藻を日本の白亜紀前期から初めて報告でき、アジアやテチス海での生層序と比較できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年、長崎県の恐竜化石産地で採集し、保存状態のよいパリノフロラを発見した。九州の中生代において初めてのパリノフロラ報告となり、現在研究中である(平成26年6月九州大学における日本古生物学会にて発表予定)。また、平成25年9月の北海道の調査で、琥珀に含まれている昆虫と共に、胞子・花粉の存在を確認した。日本では初発見であり、世界でも珍しい材料なので現在北海道大学と共同研究を進めている。 現在の理解では、被子植物は遅くとも白亜紀最初期に低緯度地域に出現し、それまでのシダと裸子植物主体の植生を被子植物主体の植生に移行させていった。日本とアジアにおいては被子植物の侵入とその後の植生変遷の過程が、いまだ十分明らかにされていないため、古花粉学によってそれを明らかにすると共に、その背景となる環境変化についても情報の集積に努める。
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Research Products
(4 results)