2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子ドット単一THz光子検出器とイメージング顕微鏡への応用
Project/Area Number |
11F01818
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
生嶋 健司 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HADLEY Videlier 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | テラヘルツ / 検出器 / イメージング / グラフェン |
Research Abstract |
本研究の目的は、半導体量子構造によるテラヘルツ波の単一光子検出機構を応用して、局所領域からのテラヘルツ放射を超高感度で検出・イメージングする基盤技術を提供することである。特に、単電子トランジスタとして動作する半導体量子ドットや量子ホール効果素子におけるランダウ準位間光学遷移を追及し、テラヘルツ帯域の検出器および光源の可能性を探る。現在、量子ドット検出器はGaAs/AlGaAsヘテロ構造結晶において作製され、強磁場中におけるサイクロトロン共鳴を利用して2-3THz帯域のフォトンカウンティングに成功している。しかしながら、イメージングや分光などに応用するためには、検出器の基本性能の拡張や使い勝手を改善する必要がある。本研究では、波長領域の拡張のために、グラフェンをはじめとする新しい材料での開発を試みた。グラフェンの場合、中赤外光(10-20THz程度)の単一光子検出器が可能であるばかりでなく、その特異なバンド構造に由来する非等間隔なランダウ分裂により、マルチバンドの検出機構が推測される。当該年度において、高配向性グラファイト(HOPG)からテープにより剥離されたグラフェンとCVDにより作製されたグラフェンについて、それぞれホール素子を作製するプロセスを確立した。電極を中赤外光Bow-tieアンテナとして設計した多層グラフェンデバイスを作製し、量子ホール効果を観測した。解析から5層グラフェンと判定されたが、そのランダウ分裂は1層とは大きく異なることが示唆された。最近の理論的研究と比較した結果、グラフェン層間結合による特異なランダウ分裂を観測した可能性が高い。 一方、イメージング技術の開発として、培養細胞のサーモグラフィを可能とする光学システムおよび細胞環境セルを作製し、その性能を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テラヘルツ・赤外帯域の新規高感度検出器の開発から顕微鏡システムへの応用までの道のりは長いが、各要素技術に対して着実に進展しており、新規検出器と顕微鏡システムとの融合が視野に入りつつあるから。
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Strategy for Future Research Activity |
多層グラフェン(3層~10層)のランダウ分裂は、すでに解明されている単層、2層グラフェンとは層間相互作用により大きく異なることが最近理論的に指摘されている。単層、2層ばかりでなく、多層グラフェンのランダウ分裂の解明は、テラヘルツ検出、または発光機構の開拓にとっても重要であると考えられる。今年度観測した5層グラフェンの量子ホール効果をきっかけに多層グラフェンのランダウ分裂解明・制御へと推進する。一方、半導体2重量子井戸を利用した検出器をグラフェン評価および細胞サーモグラフィシステムに導入する計画である。
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