2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11J00075
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
児玉 弘 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 継続的権利救済 / 行政行為の不可争力 / 行政手続の再開 / 義務付け訴訟 / ドイツ行政法 |
Research Abstract |
本研究は、「行政処分に対する継続的権利救済」という構想のもと、行政の安定性・継続性を体現する不可争力と国民・市民の権利保障を両立させうる行政法解釈の指針を提供する理論構築を目指すものであった。具体的には、《行政手続の再開》及び《義務付け訴訟》の活用を図ることにより、不可争力概念を再構成し、一時的な権利救済ではなく継続的な権利救済を実現することを目的としていた。 研究初年度である平成23年度は、理論的基盤を構築する作業を先行させ、《行政手続の再開》及び《義務付け訴訟》の制度設計の理論モデルの構築を行った。 《行政手続の再開》については、総論にあたる部分(一般行政手続法)に加えて、継続的な権利救済モデルの精緻化のために、社会法、租税法の領域における手続の再開について文献調査を行った。今年度の大きな収穫として、一般行政手続法の立法過程における議論状況を調査したことがあげられる。すなわち、ドイツでは、1960年に義務付け訴訟が法定され、1976年に行政手続の再開の規定を含む(一般)行政手続法が制定されるまでの期間、義務付け訴訟を通じて実質的に行政手続の再開の機能が果たされていたことが明確になった。ドイツにおける《行政手続の再開》が、行政手続法制定以前より、行政法上の「不文の法規(ungeschriebener Rechtssatz)」として認められていたことが確認できただけではなく、義務付け訴訟が用いられていたということは、《義務付け訴訟》の検討を行おうとする本研究にとって大きな進展である。 このような作業を踏まえて、行政の継続性・安定性と行政による権利侵害に対する救済の両立という矛盾する要請を架橋しうる行政法上の諸概念の構築の作業に取り組んだ。この作業の手がかりとして、義務付け訴訟の新たな活用可能性を考察するのに適切な最近の最高裁判例の評釈を口頭発表で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度である平成23年度は、本研究にとっての基盤となる作業、すなわち、文献調査を中心として計画していたところ、本研究にとって必要な文献の収集、読み込み、整理をほぼ終えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる平成24年度は、本研究の最終的目標、すなわち、行政の継続性・安定性と行政による権利侵害に対する救済の両立という矛盾する要請を架橋しうる行政法上の諸概念を構築し、こうした要請を両立させうる行政法理論を提示する。その際、より一般的な議論に耐えうる概念、理論を提示するようにつとめる。 そのために、平成24年度前半は、概念、理論の構築に集中し、平成24年度の後半は、定立した概念、理論に関する論文を執筆するとともに、積極的に研究会等でも報告する。
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