2011 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母からの収縮環単離と再活性化による収縮メカニズムの解明
Project/Area Number |
11J00104
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
柏崎 隼 学習院大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分裂酵母 / 細胞質分裂 / 収縮環 / アクチン / ミオシン / 細胞骨格 |
Research Abstract |
細胞質分裂は複数のプロセスが協調的にはたらくことで起こる。中でもアクチンとII型ミオシンからなる収縮環の収縮は動物細胞の細胞質分裂において細胞膜をくびれさせる最も重要な過程である。しかし収縮のメカニズムについてはアクチン・ミオシンの相互作用以上にははっきり分かっていない。分裂酵母を含む真菌類においても、動物細胞と同様の収縮環が形成される。申請者はモデル生物である分裂酵母をゴーストにする系を用いて収縮環の収縮メカニズム解明を目指す。 本年度は分裂酵母ゴーストを用いた収縮環再活性化の系を最適化し、詳細に蛍光顕微鏡観察を行った。様々な条件で収縮速度を測定したところ、ATPが最も効率良く収縮を引き起こすことがわかり、酸性条件(pH6.0~6.5)では収縮速度が著しく低下することがわかった。種々の変異株や阻害剤を用いた実験から、II型ミオシンのATPase活性が収縮に必要であることが初めて直接的に示され、アクチンの脱重合が収縮には必須でないことを示唆する結果が得られた。また、これまで知られている種々の収縮環構成因子に蛍光タンパク質を付加した株を作製し、ゴースト中の収縮環に存在するか調べたところ、多くの構成因子が保持されていたことから、収縮実験の結果が細胞内の収縮環の性質を反映することを示す証拠だと言える。ゴーストの細胞膜をFM4-64により染色したところ、細胞膜が多く残されているが、ところどころに穴が開いていることがわかった。ゴースト内部には全く膜構造は見られず、細胞質成分、細胞内小器官が無いこともわかった。ATPを加えると、収縮環の収縮に伴って膜の一部が収縮環に追随していく様子がみられたものの、細胞膜をくびれさせることは出来なかった。今後、収縮環の微細構造解析や新奇の収縮環構成因子同定によりさらに多くの知見が得られると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に挙げた多くの項目が本年度中に達成できた。具体的には、様々な条件での収縮速度の測定、種々の変異株および阻害剤を用いた実験、既知の収縮環構成因子の有無の確認、細胞膜の染色などを行い、多くの知見を得ることができた。特に目的の一つであるアクチンの脱重合が収縮環の収縮に必要かどうかについて興味深い結果を得ることができた。アクチンとミオシンの同時観察についてもほぼ成功しており、今後さらに最適化できると考えている。以上の理由から本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に従い、引き続き収縮環の単離・精製・濃縮法の検討を行う。収縮実験の例数も増やし、収縮速度等定量的なデータを得る。ある程度結果がまとまり次第、論文を投稿する。単離・精製に成功した場合、二次元泳動と質量分析、微細構造解析を馬渕教授・網蔵博士・高木博士と協力して行う。また、収縮力の測定についても検討を行う。測定法については油滴を用いた方法、ビーズと光ピンセットを用いた方法などを考えている。
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Research Products
(5 results)