2011 Fiscal Year Annual Research Report
種子植物の生殖に関わるRNA結合タンパク質PPRの分子進化と機能の解明
Project/Area Number |
11J00134
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 壮太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | ミトコンドリア / 共進化 / RNA制御 |
Research Abstract |
本研究では35アミノ酸の縦列繰り返しモチーフであるpentatricopeptide repeat(PPR)タンパク質がRNAを認識するメカニズム,およびPPRファミリーの種子植物の生殖進化への関わりを明らかにすることを目的としている.本研究ではPPRのうち,Rf-PPRと呼ばれるサブグループに着目した.Rf-PPRはPPRの中でも特に多様性が高く,ミトコンドリアのRNA配列に対応して進化してきている。アブラナ科のモデル植物シロイヌナズナを用いる事で,Rf-PPRの機能解析,分子進化解析を行い,PPRとミトコンドリアゲノムの共進化の理解を目的とした.2011年度は以下の計画に従って研究を遂行した. (1)Rf-PPRの植物内における機能~変異株の取得およびRf-PPRタンパク質の精製~ ・Rf-PPRへのT-DNAあるいはトランスポゾンDsホモ挿入系統の取得及び表現型調査 シロイヌナズナにおける26個のRf-PPRのうち,6個の遺伝子についてT-DNAが挿入された遺伝子破壊系統を得る事ができた.変異体のミトコンドリア遺伝子発現パターン,および表現型については現在調査を行っている. ・リコンビナントRf-PPRタンパク質発現、精製系の確立 14種類のRf-PPR遺伝子断片を大腸菌でのタンパク質発現ベクターに導入し,リコンビナントタンパク質が可溶性画分に蓄積することを確認した.そのうち2つのものについてタンパク質精製系を確立した. (2)種内,種間におけるRf-PPRのバリエーション~RFL配列の取得及び進化選択圧の検出~ ・各植物種からRf-PPRのクローニングおよびシークエンス解析 科内の種を広くカバーする38種のアブラナ科植物からdegeneratePCR法によってRf-PPRの遺伝子断片のクローニングを行った.Roche 454 GS-FLX解析によりPCR産物のシークエンス解析を行った. ・PAMLなどシークエンス解析ソフトウェアによるRf-PPRの分子進化解析 分子進化解析の結果,RNAの認識を決定するアミノ酸に非常に高い多様性がある事が明らかとなった. ・1001 ecotypesからのRf-PPRシークエンスの取得及び集団遺伝学的解析 Rf-PPRは進化において平衡淘汰される可能性が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験計画は当初の予定に沿って遂行することができた.それに加え,西オーストラリア大学のIan Small教授らとの共同研究によりPPRがRNAに結合するルールを明らかにする事ができた.この成果を現在論文として投稿しており,今後本研究を推進するにあたって有利な情報になると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度単離したRf-PPR変異体の表現型解析に加え,Rf-PPRがどのRNAに結合するのかのスクリーニングを開始する.明らかにしたRNA認識ルールを用いれば比較的容易にターゲットRNAを見出せると考えている.また,分子進化についてはRf-PPR,あるいはその他のPPRと共進化するミトコンドリア配列を比較ゲノミクスを用いて網羅的に解析する.
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