2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00149
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松尾 信一郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 平均次元 / ネバンリンナ理論 / ゲージ理論 |
Research Abstract |
今年度はブローディ曲線の全体がなす空間の平均次元を研究した. 京都大学の塚本真輝氏との共同研究である. プローディ曲線とは,複素平面から複素射影空間へのリプシッツ正則写像のことであり,その全てを集めた空間は無限次元になる.この無限次元空間の幾何学を研究した. 正則写像とはコーシー=リーマン方程式の解のことであるが,コーシー=リーマン方程式とゲージ理論における反自己双対方程式には様々なアナロジーが成り立つ. この研究もそのアナロジーの一環として捉えることができる. 平均次元とは,「無限次元空間の次元」としてグロモフが1999年に導入したコンパクト力学系の位相不変量である. 例えば,N次元閉球の両側無限直積にはコンパクト離散力学系の構造が自然に入るが,その平均次元はちょうどNになる. コンパクト力学系の位相不変量には位相的エントロピーもあるが,平均次元はその位相的エントロピーの拡張になっている.位相的エントロピーが数え上げの力学系化だとすれば,平均次元は次元の力学系化である. さて,ブローディ曲線の全体がなす空間には,広義一様収束の位相を入れる. このとき,函数論における一様族の議論によって,この空間はコンパクトになるとわかる. また,ブローディ曲線の全体がなす空間には,複素数のなす群が,定義域へのずらしとして,自然に作用する. 従って,ブローディ曲線の全体がなす空間はコンパクト力学系である. よって,その平均次元を考えることができる. 我々の主定理は,その評価であり,有理型函数の場合には正確な値を求めた. これはリーマン=ロッホの定理の無限次元版と言うことができる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的であるモジュライ空間の平均次元の評価が順調に得られたから.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度の研究のゲージ理論版を整備したい.
|