2012 Fiscal Year Annual Research Report
発がんイニシエーション過程におけるTGF-βの役割
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11J00159
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
沖田 結花里 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | TGF-β / MafK / がん幹細胞 / EMT |
Research Abstract |
申請者は、発がんのイニシエーションの起こりやすさを規定する生体内因子の解明を目的として本研究を始めた。これまでに得られた知見より、TGF-βがNrf2の活性を抑制することで、発がんのイニシーションが起こる頻度を上昇させているのではないかという仮説を立てた。TGF・βがNrf2の活性を抑制する分子メカニズムの解明を行う過程で、MafKがTGF-βの標的遺伝子であることを発見した。MafKは小Maf群転写因子に属し、Nrf2のパートナー分子である。マウス乳腺上皮細胞NMuMGを用いて樹立したMafK安定発現細胞では、予想外なことに浮遊培養におけるSphere形成の亢進、免疫不全マウスでの腫瘍形成が促進していた。さらにマウスの皮下にできた腫瘍の組織学的解析を行ったところ、腫瘍細胞が皮下組織まで浸潤しており、悪性度の高い腫瘍を形成していることが判明した。このことより、MafKががん幹細胞機能の獲得に寄与することが明らかになった。近年、上皮間葉転換(EMT)を起こした細胞が幹細胞・がん幹細胞様の性質を獲得しているという報告がある。そこでMafK発現細胞でのEMTマーカーの発現を検討したところ、上皮マーカーの発現低下、および間葉系マーカーの発現亢進が見られた。MafKが腫瘍形成能やEMTを促進するという報告は今までになく、MafKががん幹細胞機能の獲得、EMT誘導に寄与しているという全く新たな知見を得ることができた。MafKがこれらの現象をどのように制御しているのがさらに検討するためにMafKにより発現が変動する遺伝子の網羅的解析を行い、腫瘍形成能獲得に寄与していると考えられる遺伝子を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TGF-βの標的遺伝子であるMafKが腫瘍形成を促進するという新たな知見を得ることができた。さらにMafKの標的遺伝子のうち腫瘍形成能獲得に寄与している遺伝子を同定することができ、今後詳細な分子メカニズムの解明につながるものと思われる。これによって発がんやがんの進展を防ぐ糸口になるものと期待する。
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Strategy for Future Research Activity |
MafKにより発現が変動する遺伝子の中から、腫瘍形成能獲得に寄与している遺伝子を同定できたので、今後は、その遺伝子がMafKによる腫瘍形成、EMT誘導にどれほど寄与しているのかについて詳しく調べる。またその遺伝子単独でのSphere形成、腫瘍形成、EMT誘導、TGF-β応答性についても検討する。
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