2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00186
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 正輝 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ガンマ線連星 / 非熱的放射 |
Research Abstract |
本年度は主にLS5039のGeVガンマ線スペクトルの折れ曲がり問題とX線周期変動問題について取り組んだ。 まず、GeVガンマ線スペクトルの問題についてであるが、本研究では二光子対消滅が起源である可能性を探った。伴星であるO型星からの光子を標的にする場合、観測スペクトルの折れ曲がりと異なるエネルギー帯で折れ曲がる。そのため我々は新たな光子源を仮定し、そこから来る光子との対消滅を考えた。その結果、観測されている折れ曲がりをうまく説明することができた。 次にX線放射の問題についてであるが、X線放射の起源はこれまでシンクロトロン放射であるとされ、逆コンプトン散乱による放射の可能性は無視されてきた。しかし、以下に述べるとおり、この天体では逆コンプトン散乱も重要となる可能性がある。LS5039の連星間距離は非常に短く(O型星の半径程度)、高密度星はO型星の光子場が非常に厚いところを公転している。高エネルギー電子が高密度星に付随しているとすると、その高エネルギー電子はO型星からの光子にエネルギーを渡し(逆コンプトン散乱)、非常に効率よく冷える。こうして冷えた電子からの逆コンプトン散乱による放射はX線放射に寄与しうる。本研究では、高密度星の位置で電子のエネルギー分布と標的光子(=O型星光子)の分布を与え、数値積分することによりスペクトルと光度曲線を計算した。その結果、注入電子の最低ローレンツ因子が約10^<3>であり、かつGeVガンマ線の変動と同じ周期変動をするときに、観測されたX線のスペクトルべき指数とフラックスを再現することができた。さらに、X線をシンクロトロン放射由来と仮定したときには説明できなかった周期変動も説明することができた。したがってX線放射は逆コンプトン散乱由来である可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった、(1)GeVガンマ線スペクトルの折れ曲がりの起源と(2)X線周期変動の起源を説明することができたため、おおむね順調に進展しているといえる。ただ、それぞれを説明するモデルには問題点もあり、より深い理解を得るためにはさらなる研究が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
項目11でも述べたようにLS5039からの放射をより深く理解するためにはさらなる研究が必要であるが、問題が細かくなりすぎて本質から外れる恐れがある。そのため、次は同じガンマ線連星であるPSR B1259-63を研究対象とする。この天体は高密度星がパルサーであることがわかっており、さらに大質量星(Be星)の周りにあるガス円盤が重要な役割を果たしている可能性がある。そのため、研究の取り組み方は大きく変わってくるが、LS5039と同様に逆コンプトン散乱冷却やシンクロトロン冷却が効くことがあるため、統一した理解ができる見込みがある。この系では、上記のガス円盤に加えパルサー風と星風の相互作用が重要になるため、流体シミュレーションの専門家との共同研究が不可欠となる。
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Research Products
(10 results)