2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J00233
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大西 祥晴 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インジウムハライド / シリルハライド / ルイス酸 / エノールアセテート / 不飽和ケトン / 共役付加反応 |
Research Abstract |
環境問題が取り沙汰される今日、環境面を意識した技術の開発が強く求められている。環境問題の中でも特に廃棄物による環境汚染および資源枯渇問題に焦点を当て、現在は「有機合成反応の極限的な負荷軽減触媒の追及」を研究課題として掲げ研究活動に取り組んでいる。 具体的な研究内容としてはエノールアセテートの不飽和ケトンへの共役付加反応とそれに続く官能基変換手法の検討を行っている。エノールアセテートは金属元素を含まないため、これを用いた共役付加反応は従来の金属エノラートを用いた手法では回避が困難であった反応後の金属廃棄物副生を抑制することが可能である。また、エノールアセテートは求核性と求電子性を併せ持つ魅力的な化合物であり、この性質を活用することで不飽和カルボニル化合物への共役付加反応において原子効率100%という理想的な反応系を実現した。本反応系の触媒には塩化インジウムとシリルクロリドという二種のルイス酸を組み合わせた複合ルイス酸が効果的であり、様々なエノールアセテートと不飽和ケトンを組み合わせることにより多様な生成物の合成に成功した。また、生成物の共役付加体はエノール型として容易に単離することが可能である点が本研究の大きな特徴である。得られた生成物はトリブチルチンメトキシドと作用させてスズエノラートに変換することでさらなる官能基変換が可能であり、ハロエステルとのラジカルカップリングやニトロソベンゼンとのニトロソアルドール反応により多様な官能基を有する化合物の合成に成功した。金属エノラートを用いる従来法ではエノール型共役付加体が不安定で単離が困難であるために共役付加体生成物を用いた官能基変換には課題が残されていたが、エノールアセテートを用いた本研究ではその課題を見事克服できた。この成果は合成化学の観点からも非常に注目すべき内容である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画では原子効率100%の反応系の確立を掲げていたが、現在までの研究でその反応系の一つであるエノールアセテートの不飽和ケトンへの共役付加反応をほぼ達成している。あとは不斉発現の実現を残すのみとなっているため、研究の達成度としてはおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っているエノールアセテートの不飽和ケトンへの共役付加反応に関しては今後不斉反応への展開を行う。その際、種々の不斉配位子の検討を行う必要があるが、インジウム触媒による反応系においてはPyBOX系配位子と呼ばれる化合物群が有効であることが多いという知見があるため、まずはそれらの検討を行う予定である。 また、アミンなどの含窒素化合物をターゲット分子とした新奇ルイス酸触媒の開発およびその利用法の確立についてはハロゲン原子との親和性の高いインジウム種と、親窒素性の高いゲルマニウム種の組み合わせによる複合ルイス酸を用いた検討を行う。インジウム種およびゲルマニウム種は共に所属する研究室で近年精力的に研究されている金属元素であるため、そのノウハウを活かして研究を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)