2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質内における励起状態反応ダイナミクスの理論的解明
Project/Area Number |
11J00238
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
東 雅大 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 励起状態ダイナミクス / ESPT / FMO / EE-MCSI / MMSIC / 10-HBQ / BChl |
Research Abstract |
溶液内やタンパク質内のような凝縮相における励起状態反応のダイナミクスに関する理論的研究は、励起状態の電子状態計算の高い計算コストのため、ほとんど進んでいない。そこで本年度は、凝縮相の励起状態反応ダイナミクスを理解するための第一歩として、凝縮相の化学反応のポテンシャル関数を高精度・高効率で作成可能なEE-MCSI法を用いて、シクロヘキサン溶媒中で10-Hydroxy-benzo[h]quinoline(10-HBQ)の励起状態分子内プロトン移動反応とそれに伴うコヒーレント振動状態の解析を行った。得られた結果は実験とよく一致し、コヒーレント振動はプロトン移動だけでなくBenzo[h]quinoline部分の基底状態と励起状態の構造の違いによっても励起されることが分かった。さらに、溶媒は溶質と衝突してコヒーレント振動の寿命を短くする効果だけでなく、面外運動を抑制し面内運動から面外運動への分子内振動緩和を防ぎ寿命を延ばす効果も併せ持つことが分かった。 また、光合成反応で重要な光捕集アンテナ系タンパク質の1つであるFenna-Matthews-Olsonタンパク質(FMO)における色素バクテリオクロロフィル(BChl)間の励起エネルギー移動反応の分子論的機構の解明を目指して、BChl1分子の基底状態と励起状態を表すポテンシャル関数を効率的に作成するためにMolecular Mechanics with Shepard Interpolation Correction法の開発を行った。EE-MCSI法を応用し、分子力場と修正Shepard内挿法を組み合わせることで、少数の参照点での電子状態計算で高精度・高効率なポテンシャル関数を得ることが可能となった。さらに、FMO中のBChlの基底状態と励起状態でのMDシミュレーションにおいてエネルギー差の分布が大きく異なることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は10-HBQのEPIPT反応に伴うコヒーレント振動の解析だけでなく、FMOタンパク質におけるBChl間の励起エネルギー移動の分子論的解明を目指して新たな手法の開発を行った。当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
MMSIC法を用いてFMO中のBChlのMDシミュレーションを行った結果、励起双極子モーメントや再配向エネルギーといったBChlの励起状態の性質が用いる電子状態計算手法に大きく依存することも分かった。現在、最適な電子状態計算手法について調査中である。さらに今後はMDシミュレーション中における励起子間の相互作用を見積もるための手法を開発する予定である。
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Research Products
(9 results)