2011 Fiscal Year Annual Research Report
棘皮動物のプルテウス幼生形態の収斂進化をもたらした分子機構の解明
Project/Area Number |
11J00274
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古賀 皓之 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 棘皮動物 / プルテウス幼生 / 幼生骨片 / 進化発生学 |
Research Abstract |
棘皮動物のプルテウス型幼生形態の進化機構を解明する上で鍵となる、幼生骨片の獲得機構の研究を行っている。先攻研究で、幼生骨片の獲得には転写因子Alx1と、vegfシグナルに関わる遺伝子が幼生期に発現することが必要であることがわかっている。2011年度は、幼生骨片を持たず、これらの発現がみられないイトマキヒトデ胚を用いて、alx1遺伝子の強制発現や、vegfシグナルの活性化を行う試みと、その影響の評価を行ってきた。 まず、イトマキヒトデ胚においてalx1遺伝子の強制発現を行った。その結果、表現型に影響がみられなかった。目に見える形態に変化がなくとも、遺伝子発現のレベルでは何らかの変化が起きていることも考えられるため、次世代シーケンサーを用いて、発現量比較解析を試みた。現在解析中である。 また、イトマキヒトデ胚におけるvegfシグナルの活性化を試みた。vegf受容体は大きな遺伝子のため、強制発現のための全長クローニングが困難であった。そこで、大腸菌において報告されているような、細胞内ドメインのみの導入による活性型vegfrがウニでも働くかどうかを試みたが、活性を確認することができなかった。そこで、現在、ウニvegfrの全長クローニングを試み、vegfリガンド遺伝子とともに強制発現することでの活性化を目指している。 さらに、実証的にこれらの因子の幼生骨片進化への関与を示すために、ヒトデ幼生内で、ウニの骨片マトリクス遺伝子のシス調節領域の活性化が起こるかどうかを指標にする。具体的には、ウニの骨片形成遺伝子のシス調節領域とGFPをつなげたコンストラクトを、alx1およびvegfシグナルを強制発現したヒトデ胚に導入し、GFPの発現を確認する。本年度は、cyp1、sm27、Cara7LAといった遺伝子のゲノム上流領域をクローニングし、GFPとつなげたコンストラクトを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
alx1の強制発現の影響がでない、vegfシグナルの活性化につまずくといった予想外の障壁があったため、本年度はやや遅れが生じた。しかし、本年度で実験の準備が整いつつあり、次世代シーケンサーの利用といった新たな方策も導入したため、次年度以降多くのデータが出ることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
vegfrの全長クローニングを行い、リガンドとともにヒトデ胚に強制発現し、その影響を調べる。またalx1との共発現も行う。強制発現の影響は次世代シーケンサーによるRNAseqで評価する。次世代シーケンサーのデータの解析は基礎生物学研究所の協力のもと行う予定である。また、既にクローニングしたウニの骨片形成遺伝子のシス領域の機能を、バフンウニを用いて検証し、活性のあったものはヒトデ強制発現胚に導入し、活性がみられるかどうかを調べる。さらに、クモヒトデとウニはそれぞれalx1とvegfシグナルを幼生期に発現しており、その調節機構の比較にもアプローチする。ウニにおいて中胚葉分化に関わる転写因子群の発現をクモヒトデでも網羅的に調べる。
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