2011 Fiscal Year Annual Research Report
導電性高分子フォトニック結晶の数理解析と低電力駆動型・高性能回折光変調材料の作成
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11J00285
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡田 直樹 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 周波数分散 / 表面プラズモン共鳴 |
Research Abstract |
本年度は,周波数分散性を持つ物質に対して電磁場の相互作用を高精度に計算するため,数値解析理論の研究を行った.周波数分散性とは,物質外部の電磁場の影響によって物質内部の電子に偏り(分極)が生じ,電磁場の周波数ごとに物質パラメータ(誘電率・透磁率)が変化する特性である.電流(導電率)を伴う物質の電磁場吸収作用もまた,周波数分散である.本研究で扱う導電性高分子フォトニック結晶は,強い周波数分散性を伴うため,その高精度計算法の確立は数値シミュレーションの妥当性を確保する上で重要である. 本年度の研究では,金属中の強い分極作用によって生じる表面プラズモン共鳴を対象に,周波数分散に対する高精度数値計算法の開発を行った.表面プラズモン共鳴とは,特定の周波数の電磁場に対して分極した電子が金属表面で強いエネルギー相互作用を示す現象である.表面プラズモン共鳴によって生じる電磁波(表面プラズモン波)は,金属表面で非常に大きな振幅を持つにもかかわらず,表面から離れると急激に減衰する.従って,空間を有限の格子点に分割する数値計算において,表面プラズモン共鳴は扱いが難しい問題である.微細な計算格子を使えば解析は可能であるが,計算量が大幅に増加してしまう。本研究では,粗い計算格子を使い,表面プラズモン共鳴を高精度に計算する手法を確立した。 本研究では,電磁気学の理論式(Ampereの法則とFaradayの法則)から導かれた数値モデルにおいて,上記の表面プラズモン波の急激な減衰特性に対して有効な式を抽出し,新しい数値モデルを開発した.我々は,開発したモデルを用いて無限に長い円柱および球体の電磁場散乱を計算し,理論解と比較することによって開発手法の高い計算精度を実証した. 以上のように本年度は,分散媒質に対する電磁場の数値計算法の研究において成果を上げた.実施計画は,分散媒質の理論研究で成果を収めており,概ね予定通りに進行している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は,導電性高分子フォトニック結晶の解析伴う分散性媒質の高精度計算法の開発をメインテーマに掲げており,その内容通りの成果を収めている.今後,導電性高分子フォトニック結晶の数値解析の準備を進める予定であり,本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,導電性高分子フォトニック結晶の構造および物質パラメータに基づき,数値計算モデルを作成し,光学特性の解析を行う.次年度の課題は,物質パラメータの測定およびモデル化が正確に行えるかという点である.物質パラメータの測定が難航する場合は,すでに物質パラメータが計測されている同等のナノスケール構造に対して解析を行い,先にシミュレーションの実行システムを構築する.
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Research Products
(3 results)