2011 Fiscal Year Annual Research Report
超高速時間分解誘導ラマン分光法による超臨界水中での分子内電荷移動反応機構の解明
Project/Area Number |
11J00334
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 浩二 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 超臨界流体 / 超高速分光 |
Research Abstract |
本研究では、超臨界水・アルコール中での電荷移動反応における、局所的な溶質-溶媒間相互作用ダイナミクスを調べ、特異な反応性の機構を探ることを目的として、フェムト秒分解誘導ラマン(FSRS)分光法のためのシステム構築を行った。まず回折格子、スリット、ミラー等の光学部品を利用し、FSRS分光法に必要な周波数幅の狭いラマンポンプ光を生成することに成功した。生成したラマンポンプ光を、既存の過渡吸収システムの白色プローブ光と同軸上、同タイミングでセルに入射することにより、水中でのp-ニトロアニリン(pNA)の振動モードを誘導ラマン信号として観測することができた。つぎに、電子状態を励起するためのアクチニックポンプを光学遅延をかけて入射することにより、電子励起による分子内電荷移動反応ダイナミクスを観測しようと試みたが、思いの外pNAの誘導ラマン信号の変化が小さく、現在のシグナル・ノイズ比では詳細な時間変化を観測することが出来なかった。超臨界状態へ向けてよりノイズの増える高温高圧な条件での測定を行うには、誘導ラマンスペクトルがより顕著に変化する反応系が必要と考え、その探索を行う過程で、ビス(p-ジメチルアミノフェニル)ジスルフィドの光解離反応に着目した。まずイオン液体中での過渡吸収分光法を行い、光解離により生成するp-ジメチルアミノフェニルチイルラジカルの再結合過程や、溶媒和ダイナミクスに関する情報を得ようと試みた。粘度の異なる2つのイオン液体[P1,3][NTf2]、[Pp1,3][NTf2]中での観測結果から、イオン液体中でのトリヨウ化イオンの光解離反応についての結果と同様、溶媒のかご効果の粘度依存性は小さかったが、その効果の大きさは比較的弱いということわかった。また溶媒和ダイナミクスについては、同じイオン液体中でのクマリン153分子と同じようなダイナミクスを示すということが明らかになった。今後は、超臨界流体中での測定にむけてシステムの構築を行なっていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ターゲット分子であるp-ニトロアニリンの誘導ラマン信号の変化が予想外に小さかったため、熱や密度揺らぎによるノイズが大きくなることが予想される高温高圧下での測定に適した、より信号が強く観測される反応系を模索する必要が出てきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
観測の対象をp-ニトロアニリンの分子内電荷移動反応からビス(p-ジメチルアミノフェニル)ジスルフィドの光解離反応に変更し、現在進めているイオン液体中での過渡吸収測定を、現在の数ピコ~数百ピコ秒の時間スケールに加え、反応初期段階を追うためのサブピコ秒スケールから、再結合過程が完結するナノ秒までの長い時間領域で行い、総合的なダイナミクスを評価した上で、超臨界流体中の測定へと移行していく。二酸化炭素やトリフルオロメタン中での超臨界領域において、圧力に依存した密度変化に対してダイナミクスがどのように変化するかを調べ、超臨界流体に特徴的な局所密度増加の影響などを調べる。
|