2011 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ―壁相互作用解明に向けた分子シミュレーションのマクロスケールへの拡張
Project/Area Number |
11J00340
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斎藤 誠紀 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 二体衝突近似 / 分子動力学 / グラファイト / プラズマ-材料相互作用 / ハイブリッドシミュレーション / アモルファス / 水素プラズマ |
Research Abstract |
平成23年度研究計画に従い,主に以下三つの作業を行った. 1.ハイブリッドシミュレーションの開発 (ア)二体衝突近似コードの改良 ACATコードとよばれる二体衝突近似コードはアモルファス材料のみを扱うシミュレーションコードであった.これを改良し任意の構造を扱うシミュレーションコードを開発した. (イ)MPIライブラリを用いたプログラム間通信クラスの開発 ハイブリッドシミュレーションは四つのプログラムが通信することで実現する.プログラム間通信を行うため,MPIライブラリを用いたプログラム間通信クラスをオブジェクト指向言語(C++)で開発した. (ウ)接続点でのエネルギー補正方法の開発 二体衝突近似法と分子動力学法でポテンシャルエネルギーの扱いに違いがある.このエネルギー差を補正する方法を開発し,シミュレーションコードに実装した.この研究は,論文誌『Progress in Nuclear Science and Technology』に採録された. 2.単結晶グラファイトへの水素原子蓄積過程の解明 開発したハイブリッドシミュレーションコードを用いて,1200万個の炭素原子からなる単結晶グラファイトに水素原子を1000発打ち込むシミュレーションを行った.その結果,水素はグラフェン層間にトラップされやすくなることがわかった.この研究は,論文誌『Journal of Nuclear Materials』に採録された. 3.アモルファス炭素の構造解析 ダイヤモンド基板に炭素を堆積させる方法と,シミュレーションボックス内にランダムに炭素原子を配置してアニーリングする方法の二通りでアモルファス炭素を作成した.構造の違いを調べたところ,結合の異方性が異なることがわかった.この研究は,論文誌『Japanese Journal of Applied Physics』に採録された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二体衝突近似-分子動力学法ハイブリッドシミュレーションの開発を進め,計画通りの成果が上がった.具体的には,(1)ハイブリッドシミュレーションコードの開発,(2)単結晶グラファイトへの水素原子蓄積過程の解明,(3)アモルファス炭素への水素原子蓄積過程の解明を行った.その成果として,四本の論文が発表した.このように,概ね計画通りに研究が進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
◆並列化による高速化 ハイブリッドシミュレーションコードにおいて各分子動力学計算領域は独立しているため、並列化による高速化が見込める。並列計算用にプログラムを書き換え、計算時間の短縮を図る。 ◆有限温度効果の調査 以下二点の改良を行う.(1)二体衝突近似において各衝突毎に原子の熱振動を考慮する.(2)分子動力学法において熱浴を付加する.そして,有限温度におけるグラファイトへの水素入射シミュレーションを行い,その温度依存性を調べる.
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